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第三百三十四話_short いまここにあることを〜黄色いクマの言葉⑮ [literary(文学)]

 小屋は森の入口の所に建っていた。森の中で切り出した木材で手作りしたような山小屋は素人とは思えないほどよくできていて、扉の中に入ると木材の香りが心地いい。

 部屋の中にはやはり木作りのテーブルや椅子がこじんまりと収められていて、キッチンではお茶を入れるための湯が沸騰してしゅんしゅんいっていた。

「ねぇ、この壁に貼ってある言葉は君が書いたの?」

 壁に貼り付けられた大判の紙には、こう書かれていた。

過ぎ去った昔のことは気にしない。

 小屋の主が答えた。

「うん、そうだよ」

「だけど君はこの間まで、過去に懺悔して悔い改めなければ、なんて言ってなかったっけ?」

「ああー、あの頃はね、宗教にはまっていたからね」

「宗教に? そうなの?」 

 さらに紙には続く言葉があった。 

遠い未来のことを思い悩まない。

「次のこの言葉も君が書いたんでしょ?」

「そうだよ」

「これって……つい最近まで、『人間はどこからきてどこへ行くのか?』なんて言ってなかったっけ?」

「ああ、それはね、そのときは哲学に凝ってたからねぇ」

「哲学に……?」

「そうさ、哲学さ。ぼくたちはなんのために生まれてきたんだろう、そしてなんのために、どんな未来を創るために存在してるんだろうって疑問さ」

「でも最後に書いてあるこれは?」 

いま、ここにあることをひとつひとつやっていけば、迷いはなくなるんだ。                

「そうさ、それは宗教も哲学も意味がないなと思えたときに思ったんだよ」

「宗教でも哲学でもなけりゃ、いったいこれはなに?」

 黄色いクマのぬいぐるみを被った小屋の主が顔中に満面の笑みを広げて言った。

「もう、そんなものはいらないんだ。ぼくがそう思ったから。だって過去や未来や見えないもののことを考えたってどうにもならないって気がついたんだもの」   

                                   

                             (黄色いクマの言葉より)

 

 

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なんだかなぁ〜!! 横 濱男

ご訪問とniceありがとうございます。
by なんだかなぁ〜!! 横 濱男 (2014-09-20 23:25) 

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