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第六百八十話_short 感覚過敏 [ordinary day(日常)]

 なんというか、近頃においが気になるのである。もともとにおいとには敏感な方ではあったが、それが一層過敏になっているような感じ。幸か不幸か敏感になっているのはすべてのにおいに関してではない。食卓のにおいや花のにおいなど、いいにおいに関しては今までと変わらないし、ごみのにおいや腐ったにおいも今までとそう変わらないようだ。ただ、人の体臭、とりわけフケのにおいに過敏になっているのだと気づいた。

 きっと夏場で、今年はとりわけ暑いから、世間のみんなの発汗量が増えているためににおいが強くなっているのだろう、最初はそう思った。しかしすれ違う人、追い越す人、傍にいる人、すべての人の頭がにおうというのはどうにもおかしいなと思いはじめた。きっと昨夜か今朝かにシャンプーしたばかりというような美女の頭皮さえにおう。ふつうはこういう場合はシャンプーの香りがしていいはずなのだが。ところがさっきも言ったようにいいにおいに関しては今まで通りで、頭皮のにおいにだけ敏感になっているらしいのだ。

 頭皮のにおい、つまりはフケのにおいというものはもちろん快いものではない。自分自身の頭皮については実はよくわからないのだが……においというものは四六時中嗅いでいると慣れて麻痺してしまうそうだから……他人とすれ違いざまに漂う頭皮のにおいはたまらなく不快だ。

 なぜそんなことになったのかはまるでわからないが、理由がなんであれ事実は事実なのだ。

 早く夏が終わってしまえ。そうすれば人々の発汗量も減って、においもマシになるはずだ。自分自身の感覚過敏を治す方法などわからないから、ひたすらそう願い続けた。

 と、秋も近付いてきた頃、ようやくあのいやなにおいが少なくなっていることに気づいた。想像通りに暑さが和らいで人々の発汗量が減ったからなのか、はたまた私自身の臭感覚に変化が起こったのか、それはやはりわからない。とにかく頭皮のにおいが気にならなくなってきたのだ。

 ようやく平穏に戻れたのだなと安心して寝床に入ったある日、今度は別の感覚が過敏になっていることに気づいた。

 いつになくやかましいのだ。いや、道路の音とか生活音とかは今までどおりなのだが。

 チロリロリロ、チロリロリロ。

 リーリーリー。リーリーリー。

 そう、虫の声だ。どこから聞こえてくるのか、秋の虫たちの声が一斉に耳になだれ込んできて頭の中で響いている。これは困った。やかましくて眠れないのだ。どうやら臭覚から聴覚へと、過敏神経が移ってしまったようなのだ。 

 蒸籠.jpg

                      了


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