第七百六十七話_short 死ぬまでにやっておきたいリスト [literary(文学)]
余命二カ月を宣告された女性が、死ぬまでにしたい十のことをリストに書くという映画があった。それを見たときはさほど共鳴しなかったのだが、自分自身の寿命を考えるようになってから、にわかにあの映画のようなことをやってみるべきだと思うようになった。
しかし数か月という余命宣告をされているわけではないので、死ぬまでにしたいことが十個というのはあまりにも少なすぎる。自分が何歳まで生きられるのかはわからないけれども、百くらいのことはできるだろうと軽く考えたのだ。
ところが実際にしたいことをリスト化しようとすると、なかなか思い浮かばない。十や二十はすぐに書けたけれども、百個という数字にはなかなか届かなかった。日々いかに漫然と生きていることかとわたしは改めて気づいたのだ。
百個ということとなると、細かいことまで員数に入れる必要がありそうだった。たとえば好きなものを食べるとか、好きな人に気持ちを伝えるとか、そんなことだ。
<残りの人生100のリスト>
①道頓堀の老舗今井のきつねうどんを食べる。
②北海道で食べたような雲丹丼をもう一度食べる。
③同じくイクラ丼を食べる。
なんだ、食べることばかりじゃない。食べたいものはほかにもあるけれども、別のことを考えてみた。
③夫に感謝の気持ちを伝える。
④一人暮らしをしている息子に愛を伝える。
⑤友人になにかプレゼントを贈る。
うーん、なんだかもっともらしい感じ。
⑥山登りをする。
⑦筋トレジムに通う。
⑧トレッキングをはじめる。
スポーツ系は苦手なので、少しハードルが上がったような気はしたが、こういうのも大事なことだと思った。
こんな調子で、食べること、住まいのこと、衣装、人間関係、旅行、趣味、運動、音楽、文芸、演劇など、なんとか100のリストを書きあげたのがもう一年も前のことだ。
いったい100のことを実行するのにどのくらいかかるのだろうかとあの時は思っていたが、ハードルを下げすぎたのだろうか、ほとんどのことが一年足らずで実行できてしまった。
食べることなどいとも簡単だったし、苦手な運動やアウトドア系のリストも一度くらいならなんとかなった。旅行だって、国内なら簡単なことだし、イタリア旅行もニューヨーク行きも、節約旅行ではあったが、簡単に実行できてしまった。
わたしはまだまだ生き伸びそうではあるし、こんなことならリストをもっと追加すべきかなとも考えたのだが、いやいやまだできていないリストも十あまり残っているのだ。これを実行しないことには次には進めないと思いなおした。
しかし、残されたリストについては、これがなかなかハードルが高すぎてどうやれば実現できるのか途方にくれてしまうのだ。
●宇宙船に乗る。
●芥川賞を取る。
●アイドルデビューする。
●総理大臣になる。
●合衆国大統領に会う。
●プーチンと会う。
●世界平和の仲介をする。
●ノーベル賞を取る。
●天国の階段を上る。
●生き返る。
了
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