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第七百七十八話_short番外 希望 [literary(文学)]

 

 

 

 

 あれ? なんだここは?

 

 

 気がつくと僕は知らない場所に立っていた。知らない場所?

 

 

 いや、そうではない。ここは、見たこともないところだ。

 

 

 まっ白。

 

 敢えて言うなら白壁に囲まれた空間。でも、白い壁があるわけではない。白い空間はどこまでも続いている。

 

 

 さっきまであった道や木々や空はどこに行ってしまったんだ? なんなのだ、ここは。

 

 

 僕はだんだん怖くなってきた。なにもない。そして誰もいない空間。なぜ僕だけがここにいるのか。

 

 

 思い出した。僕はとんでもなく遅刻したのだ。おととい、まるで三月ウサギのように駆けずり回っていた僕は、大事な最終話に遅れてしまったのだ。 

 

 

 そうか。ここはそれが終わった場所なのだ。 そういえば昔、映画で見たような気がする。お芝居が終わってしまってすべてが撤去された空舞台。

 

 空舞台であれば、大道具はなくなってしまっても、舞台そのものはなくなってしまわないはずなのに、ここは大道具どころかすべての存在が無になってしまっている。つまり、世界そのものが消えてしまったのだ。

 やはり本当だったのだ。千一話物語りが終わってしまったということは。

 

 僕は昨日、実優と出会うはずだったのだ。彼女とともに最後の時間を演じるはずだった。だが間に合わなかった。たぶん、実優は一人でどこかへ旅にでも言ってしまったことだろう。寂しいと思っただろうか。それとも僕の存在などなかったかのようにふるまったのだろうか。

 大切な最後のステージに乗り遅れたばかりに、僕はこの無の世界に取り残されてしまったのだ。

 だが、仮に間に合っていたとすれば? どうなっていたのだろう。少なくともここに取り残されたりはしなかっただろうが、消えてしまった世界とともに消滅したに違いない。

 さあどうするか。僕は頭を抱え込んでしまった。

 想像してみるがいい。なにもない、誰もいない世界にただ一人存在しているということを。

 これは生きているということなのか? それとも死んでいる? いやいや、少なくとも僕は生きている。周囲が死んでしまった? いや、消えてしまっただけ。壁もないのに目の前は真っ白。暗闇じゃないだけましだとも言えるが、しかし真っ暗闇と真っ白い世界と、何が違うというのだ?

 なにもないからかなり遠くまで見えているはずなのだけれども、ただただ白いだけでなにも見えない。もし何かがあったら、誰かがいたら影くらいはわかるはずなのに。

 僕はどうしようもなく歩きはじめた。

 歩いても歩いても白いばかりで、前に進んでいる気がしない。でもなにもない白い地面を歩いていることは実感できているので、たぶん歩み進んでいるのだと思う。どこまで行けば、どのくらい歩けばなにかが変化するのだろうか。

 僕は前に進むことできっと何か変化が訪れるに違いないと信じて、とにかく歩き続けた。いつかまたこの世界が現れるに違いないという微かな望みだけを抱いて。 

白い世界.jpg  

                      了


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