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第三百七十五話_short 冗長な人々 [literary(文学)]

 無駄が多くてだらだらと長いことを「冗長」という。

”Excuze me? If you can give me  few second , could you teach me about the way to the sabway station?"

 米国を旅している日本人が街角にいたアフリカ系アメリカ人に道を訪ねたそうだ。すると彼は答えた。

”What?!"

 黒い顔に光る大きな目にビビった日本人はかろうじて最後の”way to the sabway"だけ繰り返すと、即座に真っ直ぐぐ行って左! と教えてくれたという。 

  

「いやぁ、いいお天気ですなぁ」

「いやいやほんとうに。いいお天気だと気持ちがいいですねえ」

「こんなにいいお天気で身体がのびのびするような日なのに、こんなところにお越しいただいて誠に恐縮ですし、まぁ、できれば私だってこんな日には窓際でポカポカと陽に当たりながらのんびりと午後のお茶など飲みながらね、その居眠りなんてしたいくらいなんですけどね……自分でさえそんな気分のときにまぁ、私よりもずいぶんとお忙しそうなあなた様をお呼びたてしてしまって、ほんとうになんと言えばいいのか、誠にあいすまんようなことでしてねぇ」

「なにをおっしゃいます。私こそお忙しいあなた様のお手を煩わすよなことになってしまって、しかもよりによってこんなのんびりしたいい日を潰してしまうようなことになってしまって、誠に申し訳なく思っていますよ」

「いやまあそんな。そのようなことをおっしゃられますと、私、ますます恐縮してしまいまして、その、いったいどうしたらいいのかと困ってしまうようなことでして……でまぁ、改めて申すのもなんなのですが、本日お越しいただきますようにあのようなご連絡を差し上げましたのも、それも電話では不足だと思ってわざわざ書面をしたためまして書簡でお送りいたしましたのも念を入れるためでして……もしかして却ってそれを煩わしくお思いになられたのではないかと後からまた顧みたりなどしてしまいまして、まぁ、それも含めて本日はお話させていただきたいというような……」

「いえいえいえ、煩わしいだなんて滅相もない、大事なお話だと書いておられましたので、それは大変だと心して足を運ぶようなことはありましても、面倒だとか煩わしいだとかそのようなことを思うことは金輪際ございませんで、むしろ平素よりお世話になっておりますあなた様が仰せになられることにできるだけ沿ったかたちでお伺いしたいとそう思っておりましてな」

「そうですか、そこまでお考えいただいておられるとはますます恐縮しますな……ところで、今日はなにをお話するんでしたかな?」

「は? それを私に聞かれましても……」 

 とにかく控えめで礼儀正しく謙虚な人間ほど長生きせねばならないのかもしれませんな。

                      了


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第三百七十四話_short 心霊写真 [horror(戦慄)]

 くそっ。霊子の奴め。部屋に仲間を呼んでの楽しい倒しいパーティに俺を呼ばないなんて! やっぱり俺は振られたのか? こないだの「じゃぁ、これでね」っていうのは、もうこれっきりっていう意味だったのか?

 先週、霊子と喧嘩した。軽い言い合いだと思っていたけど、あいつはだいぶん溜めこんでいるみたいだったもんなあ。しかしなんか悪いことしたのか、俺は? 女ってやつはわからない……

 悔しい悔しいと思っているうちに霊子のマンションまで来てしまった。もう十時を過ぎているが、三階にある霊子の部屋は賑やかそうなライトが灯っている。

 いったい誰が来てるんだ? 男も呼んだのか? 俺は無性に部屋の中を覗きたくなった。

 三階か……ちょっと高いけど、ま、大丈夫だろう。

 俺はマンションの外壁を上りはじめた。塀や空調の室外機、樋なんかがあって案外楽によじ登れる。

 ようやく霊子の部屋のベランダに手が届いた。腕に力を込めてベランダの格子を乗り越えたが、ものがいっぱいで足を置く場所がない。俺は格子にしがみついたまま、奇妙な格好で首を伸ばして窓に近づけた。音楽が鳴っていて楽しそうな笑い声が聞こえた。

「いーい? 撮るよ!」

 俺の首が中が水平に伸びて見える位置に達したとたん、パシッっと閃光が目を射した。

 

「わぁ……なにこれ?」

「なに? どうしたの?」

「ほら、ここ見て。窓のところ」

「わっ! 誰かの顔が写ってる」

「ええーっ! ここって何階だっけ?」

「三階よ」

「三階の窓に人が映ったりする?」

「なんか気持ち悪いわね、この驚いたような顔」

「霊子、あなたなんか悪い霊を呼びこんでない?」

「霊……? そ、そんなの……」

 霊子は最近ストーカー化している元彼のことを思い出したが、厭なことを忘れるためにすぐに振り払うように首を振った。 

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第三百七十三話_short 路模富くん [science Fiction(空想)]

 倉井さんの様子がいつもと違う。いやに明るい感じなのだ。

 いつもは眉間に皺を寄せて暗い顔をしてうつむいているのに、今日は朝から笑い顔でなんだか明るい感じなのだ。

「やぁ、倉井さん、今日はいやに調子よさそうだね」

「ああ、おはようございます。わかりますか?」

「うん、なんだか嬉しそうだ」

「そうでしょ? 自分でもニコニコしているのがわかるんです」

 彼女はニコニコと言ったが、見たところニコニコというよりはヘラヘラしているといった感じだ。

「なにかいいことでもあったんですか?」

「いいえーそーゆーわけでも……」

 倉井さんが言うには、友人に勧められてあるものをネットショップのアマゾンで買ったと言うのだ。 

「これなんですけどね」

 倉井さんは頭を突き出して、そこにつけたままのカチューシャのようなものを見せてくれた。

 それはほんとうにカチューシャと同じ感じで、ただ耳の後ろ辺りがメカニックになっていて、どうやら頭の中に刺しこまれているらしい。 

 倉井さんは両耳の後ろを指で指しながら言った。

「ここのところからね、軽い電流が流れていて、脳の前頭葉側部を刺激し続けているんですって」

 脳に電流? なんだか穏やかじゃない話だ。能の前側頭部と言えば……

「これね、路模富くんっていってね、暗い性格が治るんですよ」

 路模富くん? 路模富……ロボトミ……それって前頭前野にメスを入れるあの……

「それでね、これをつけてから私、ローンのこととか、将来の不安とか、なんであんなに悩んでいたのかなって? 不思議に思えちゃうくらい……うふふ」

 倉井さんのへらへら笑いの唇がだらしなく動いて少し涎が垂れた。

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第三百七十二話_short 話のわからないぼく [literary(文学)]

 リハビリの一環だと思って随分久しぶりに映画を観た。

 みんなが面白いと言っている最近話題のあれだ。始まって五分。わからない。二十分。眠い。三十分。ぜんぜん面白くない。

 ちっとも面白くないというか、なにをやっているのだかさっぱりわからないのだ。

 美しい街並み、美しい女性が現れて、怪しげな男と話をしている。映像のひとつひとつは美しかったり、印象的だったり、なんだか興味を惹かれるのに、話がつながっていかない。というよりも、ぼく自身が物語として把握できないのだ。

 主人公がこうしてああなってだからこんなことになる……因果関係が連鎖してそれが一筋のストーリーとなるからものがたりが成立して面白いと思うのだろうが、ぼくにはそれができない。

 実はある事故で脳が損傷して、いまのぼくには言葉がわからないのだ。

 言葉がわからないと筋書きがわからなくなるということを初めて知った。物語は言葉があってこそ成立するのだ。創作であれ実話であれ、人はそれを言葉によって再構築することによって自分のものとして理解できるのだ。

 映画のみならず、小説もわからない。自分自身の歴史すらわからなくなっているのだ。

 言葉を失って初めて言葉の意味がわかった。

 言葉を失くしたのに、なぜこの文章がかけているのか? それはおいおい語るとして……。

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第三百七十一話_short 食べる習慣 [literary(文学)]

 空腹でもないのに、食事の時間が来るとなにかしらものを食べる。

 長いことそんな生活を続けてきた。ところがそういう食習慣こそ肥満の原因であるという知識を得て考えを改めようとしたことがある。しかし長年身についた習慣はそうたやすく手放せないのが現実だった。

 ここに来てからもう一週間が経つが、その間なにも食べていない。空腹にすらならないのが不思議だ。まるで突然に体質が変わったかのようだ。人間は食べなくても生きていられるものなのだ。しかも水もほとんど飲んでいない。一週間も水を飲まないと死んでしまうなんて聞いていたがそんなことはない。のまず食わずでもまだまだ大丈夫だ。

「腹が減って死にそうだ」なんてとんでもない勘違いをしていたものだ。食事時になるとお腹が減ったように感じたのは、あれは気のせいだった。

 とはいうものの、空腹ではないがなにかを口に入れたいという願望がまったくないわけではない。口寂しいのだ。そんなときはそこらへんにある小石を口に入れて飴玉のようにしゃぶってみたり、ポケットにあった布をガムのようにしがんで欲求を満たした。だって腹も減っていないのに食べる必要なんてないのだから。

 さらに三日ほどが過ぎたが、やはり腹は減らない。本当に不思議だ。尤も腹を減らしたところでここに食い物はなにもないのだから仕方がないのだけれども。

 本当のことをいうと、食べ物があったら食べていたかもしれない。食べるものがないからこそ、食欲にまつわる知識を思い出し、食べなくても生きていけると自分に信じ込ませた。そして実際にそのことに成功した。

 ある話を医者から聞いたことがある。自然死に向かっている動物は、食べなくても飲まなくてもいいようになるという。そうすることによって死を迎え入れる準備をするように体ができているのだという。

 だとすると私は死ぬ準備を始めているということなのだろうか? まさかそんな。

 それにしてももう十日以上ここにいる。救助隊は来ないのだろうか? 私はあとどのくらい飲まず食わずでいられるのだろうか。

 真っ暗な瓦礫で閉ざされた小さな空間で私は声をあげてみた。

「おおーい! 誰か助けて〜?」

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第三百七十話_short いつも正しい人 [allegory(寓意)]

 大越部長は身体もでかいがよく響く大きな声の持ち主でもある。総じて悪い人ではないのだけれども、いつも大きな声で話すので近くにいると耳が壊れてしまいそうだ。

 仕事の合間にどういう流れだったかわからないが饅頭談義になった。

「俺は酒も好きだが甘いもんも好きだ。そんなもの、漉し餡より粒餡の方が美味いにきまってる!」

 例によって部長がでかい声でそういうと、それまであっちだこっちだと言っていたみんなは黙って頷くしかなくなり、談義はそれで終了した。

 いつもこう。でかい声が出るとそれが結論になる。

「なんだって? 男と女? そんなもの男が偉いに決まってるじゃないか!」

 ある日の男女雇用均等勉強会でも、部長が意見を言うともうそれが正しいことになってしまう。男女平等論を持論とするA女史も目を白黒させながら黙りこんでしまった。

「あのう、部長が印鑑を押されたこの伝票、ここのところが間違っているようなんですけど」

 経理部の女子社員に伝票を差し出されて、大越部長は経理女子と伝票を見比べながら大声を出した。

「なんだなんだ。俺が押印してるんなら、それで正しいんだよ。うん、間違いない!」

 部長はいつも正しい。大声を出して言うんだからますます正しい。 しかし経理女子も負けていなかった。

「いいんですか? これ、大越部長の出張費、宿泊料が支払われないことになってしまいますけれど……」

 急に部長は小声になって言った。 

「そ、それは困るなぁ……」 

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第三百六十九話_short 失われた老々介護 [literary(文学)]

「また持病が出てきてね」

 木八神さんは昔とても世話になったいわば恩師のような人なのだが、最近ご近所に引っ越してこられたことを知って度々ともにお酒を交わすようになった。リタイアして数年ということでまだまだ若いのだが、若い頃の無理が祟ってか、内臓のあちこちにガタがきているという。

「そうですか。気をつけてくださいよ。お酒は飲んでていいんですか?」

「俺から酒を取ったらなにも残らないじゃないか」

 歳をとったといってもまだまだ先は長いという年齢だけれども、私自身も含めて健康に気をつけるに越したことはない。

「腎臓が悪いのだったら、生野菜はだめですよ」

 聞きかじりの情報を伝えると大村さんは意を得たりという顔をして言った。

「そうなんだよ。健康のためだと思って好きでもない生野菜を一生懸命食ってきたのに、今度はだめだっていうんだ。いったいどういうことか」

 生野菜のとりわけ根っこの部分にはカリウムという養分が含まれていて、これが腎臓結石などを引き起こすのだと言うことを、私は愛犬を動物病院に連れて行って知った。

 初老の男と話していてふと思った。

 私自身も同じ境遇だが、木八神さんは独り暮らし。先のことを考えると孤独死ということも予測しておかねば。いや、その前に患いついてしまった時には誰かの介護が必要になるだろうな。そのとき木八神さんの面倒を見る人なんているのかな?

 私は大村さんよりも一回り若い。ご近所にいてこのままお付き合いを続けていたら、そのうち私が介護してあげることも考えなくてはならないな。木八神さんは奥さんに先立たれて子供もいない。親類とも疎遠だと聞いている。かつての仕事関係の友人は多いようだが、介護までできるような人はそう多くはないだろう。

 翻って自分自身のことを考えると木八神さんとそう変わらない境遇であり、突き詰めて考えると気が遠くなりそうなので、もうそのことを考えるのはやめた。

 それから数日間、木八神さんからのお誘いもなく、日々の生活に追われていたのだが、ひと月ほど経ったある日、共通の知人から電話が入った。

「昨夜、木八神さんが亡くなりました」

 それは信じがたいほど唐突な知らせであり、同時に信じたくないほど悲しい現実だった。 

 あのとき持病が悪くなったと言ったのは、思いのほか切実な訴えだったのだ。それなのに私はもっと遠い未来の介護などについて妄想していた。なんと馬鹿げたことを考えていたのだろう。

 翌日、木八神さんの仲間たちによって盛大な告別式が執り行われた。 

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第三百六十八話_short レッテル [allegory(寓意)]

「そりゃ、無理というもんだろう」

 廊下沿いにある打合せ室で誰かが話しているのが聞こえた。どうやらうちの課長と部長の声だ。

「でも、いまみんな仕事が詰まってて……」

 課長がなにか言い訳をしている。

「だからと言ってだな、奴に……一文字君にそんな仕事を任せるわけにはいかんだろう」

 課長の思惑に部長が反対しているのだ。それはともかく俺の名前が聞こえたので、その続きを盗み聞きしない訳にはいかない。俺は磨りガラスに影が映らないように気をつけながらドアに耳を寄せた。

「この仕事はとても重要なんだ。業績が悪化しているわが社を救うと言っても言い過ぎではないだろう。その矢面に立つ営業リーダーにはやっぱり……出来杉君のような人材をだな……」

「でも出来杉はいま手一杯で……一文字君ではだめでしょうかねぇ?」

「仕事とはいえ、これは闘いなんだぞ。競合相手に勝たねばならんし、お得意先だって仕事が決まるまでは敵みたなものだぞ。あの気の弱い、他人と向き合うのも無理そうなあいつには……難しすぎるだろう」

 そりゃそうだ。やめといた方がいい。俺にとってほんとうはその仕事は屁でもないが、 いまはそんな些事に身を費やしたくないものな。そんなことより俺にはするべきことがあるんだ。

 俺には世界の平和を守るという使命があるんだ。

 能面ライダーこと一文字隼人は、そっと会議室から離れた。

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第三百六十七話_short 粋な台詞を言おうよ [fantasy(妄想)]

 どうして映画の中の登場人物たちはあんなに格好台詞をしゃべれるんだろう。

 常日ごろからそう考えた結果、やはり作家が考えだすような台詞のストックを常備しておかねばああはできないのだと悟った。そりゃそうだ、あいつらは台本に書かれた台詞をしゃべっているのだもの。

 ランチの後、喫茶室でコーヒーをすすっていると同僚で友人として仲良くしている女子が近寄ってきた。美人なのだが、残念ながら彼氏持ちだ。

「ここ、座っていい?」

 ラッキーだ。彼女から近寄ってくることなどめったにないんだから。さっそく俺はストックの台詞を使ってみることにした。

「ああ、君の尻だ。好きなところに乗っけるといいさ」 

「そう、ありがとう」

「いや、礼など、もっと大事なときにとっておきな」

「……それはそうと、あなた最近B子にちょっかい出してるって噂だけど?」

「なんだいそれは。どこの口がそんなことを」

「B子本人よ。昨日も粉かけたでしょ?」

「粉? いったいなんのことだ? 俺は脱法ハーブもアンナカも持っちゃあいないぜ」

「そんなんじゃなくって……昨日、デートに誘ったでしょ?」

「……昨日か……そんな昔のことは忘れてしまったな」

「なによ、変なことばかり言って」

「そんなことより、君には彼氏がいるんだよな」

「いるわよ。だからなに?」

「悪いが、君はその彼氏と十月三十一日に別れる運命だ」

「なによ、それ。なんでよ」

 俺は言葉が効力を発揮するまでしばし沈黙した。彼女も黙ってコーヒーを飲んでいる。気まずい沈黙ではない。魔力の時間だ。コーヒーをすすってから俺は言った。

「十一月になったら、俺は君に電話する。彼氏とどうなったか聞くために」

 彼女は不思議そうな表情で俺を見つめている。

「そのとき君の身に起きたことを、俺が聞いてやるよ」

「なによそれ。なにもあるわけないじゃない。気味悪い」

 彼女はいかにも気分を害したという態度を残して席を立った。

 格好いい台詞がいつも成功するとは限らない。 

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第三百六十六話_short 言葉の勝利 [literary(文学)]

 やった。遂に認められた。

 弁護士として国内の人権問題に取り組み、そのうち、戦時中に国外で女性の人権にかかわるとんでもない問題が起きていたことを知って正義の気持ちに燃えた。調べれば調べるほど、アジアの女性たちが旧日本軍の男たちによって蹂躙されてきたという史実が見え隠れしてきたのだ。

 日本は朝鮮半島の女性たちに責任を取らなければならない。そう強く思うようになった。

  1992年2月、戦時強制連行を伴う「従軍慰安婦」の問題を国連人権委員会に定期したがなかなか取り入ってもらえなかったのだが、考えに考えて編み出した新たな言葉を付加することを思いついた。

『セックス・スレイブ』

 これしかないと思った。そして案の定、国連は食いついた。

 勝利だ。戸塚悦郎は遂に国連に認めさせた!

 これ以降、「セックス・スレイブ(性奴隷)」という言葉は世界に広まり、同時にそれは日本を表す代名詞のひとつとなった。

 これぞ言葉の力だ。戸塚は日本人を地に貶めたことを知ってか知らずか、名前の通り悦に入ってほくそ笑んだのだった。

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