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第四百六十七話_short 中毒 [literary(文学)]

 

 あれからもうひと月が過ぎた。

一年前にも同じ感覚に陥った。その前の年も、その前も。

冷静に見るとたいした価値があるとは思えないのに、一年に一度だけだと思う心理も手伝ってか、まるで習慣のように見ずにはいられない。それだけならまだしも終わってしまうとまた見たくなるのだ。

そういう時のためにと録画しておいたものを見るのだ。そうするとまた見たいという欲望の一部は満たされるものの、初めて見たときのインパクトはすでになく、渇望だけが残ってしまう。

結局新しい素材が見たいのだ。

一度見たものを二度三度と見ながら、つまらんなと思う。でも少しだけでも渇望を満たそうとすると見ざるを得ない。

これはもはや中毒だなと思う。アルコールやドラッグと同じだ。

これは視聴中毒? 大晦日に必ず見てしまうあの番組……紅白ではない、その裏で流れている低俗番組。私はたぶん、ガキ使中毒だ。

                  了

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第四百六十六話_short 群集心理 [literary(文学)]

「おまえのせいでこうなったんだ!」

「そうだ! そうだ!」

一人が叫ぶとみんなから同意の叫び声が上がった。

「我が社には利益に貢献できない人間なんかいらないんだ!」

「そうだ! まして評判を貶めるような人は出ていけ!」

「そうだ! そうだ!」

 最初はそれほど怒りを感じていなかった従業員も、むしろ事態を楽観視していた者でさえも、何度も何度も繰り返される叫び声を耳にしているうちに次第に同調するようになっていく。

「そうだ! そんなやつ、辞めてしまえ!」

 いつもは温厚な人物までもが同調して拳を振り上げた。

「そんなやつ、辞めさせろ!」

 いつも人物に寄り添っている専務が驚いて耳元で囁いた。

「社長! 急に何を言い出すんです? あなたのことですよ、従業員が怒っているのは」  

                      了

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ル・ボンの<群衆キーワード

群衆感染する

群衆は過激に走りやすい

群衆は衝動的である

群衆は暗示に弱い

群衆は時に高い徳性を示す

⑥ 国民も群衆化する

群衆は反復・断言に弱い

群衆は同一化する

群衆は服従する


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第四百六十五話_short 抱負な一年 [literary(文学)]

 典型的な中年ぶとりだね。

 人からそう言われてはじめて下腹部のでっぱりを気にするようになった。確かにここ数年の間にズボンのサイズもふた周りほど大きくなっていて、そんなものかと思っていたのだが、鏡に姿を写してみるとなんと無様なビール腹かと再認識した。

 いずれなんとかしなけりゃあと考えてはいたが、年が変わったのを機にジョギングでもやってみるかと決意をしたのだ。

 毎夕、食事前に近隣を走ってスリムな体を取り戻す。

 新年早々にそう決め、「走る」と紙に書いて壁に貼った。

 元旦はさすがに走る気になれず、二日目もだらだらしてしまったので、三日になってようやくトレーニングウェアに着替えて外に出たが、あまりの寒さに町内を一回りしただけで帰ってしまった。

 四日目のお昼前は少し暖かかったので少し遠くまで走ることができ、この調子で続けようと決意を新たにした。

 五日は初仕事で出社した後、飲み会に参加したので夜走るのは諦めた。

 こんな風にして結局今月走ったのは三回くらい。あの元日に決めたことはなんだったのだろうと、自分でも思うのだが、また少しでかくなったようにも思える腹を見下ろしながら、いやいや、まだそんなに深刻な太り方ではないはずだ。慌てる必要はない。そう思えた。

 なあに、今年は走るなんて無理なことは置いといて、食事に気をつけよう。走るとかいう積極的な健康は、まだ先でもいいんじゃないかな?

 自分で言い訳しながら考えた。そうだ、そういうのはまた来年すればいい。

 今から一年後の抱負を考えているのだった。

                      了

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第四百六十四話_short リベンジだ! [allegory(寓意)]

 このところずっとニュースを見続けている。普段はそれほどニュース等見ないのだが、今回は気になって仕方がない。もちろん日本人拘束事件だ。二人の日本人が拉致されて、ネット上で身代金が、後には人質交換が要求されている例の事件だ。

 このような場合、英米国なら相手の要求を断固拒否できるのは、武力報復できるというポテンシャルがその背景にあるからだといい、日本は武力行使ができない国であるというのだが。

「舐められてるな、日本は」?

「金を払う国だと思われてるって」

「こんなことすれば、後で大変な目に遭うってことを思い知らせてやればいい」

 一緒にニュースを見ている仲間たちが口々に言う。

「そうそう、日本は武力行使ができない国って思われてるからだよ」

 そう、確かに憲法第九条にもあるように、武力による報復はしない、できないことになってる。だが……。

「俺たちの存在が、まだまだ世界には知られていないってことだな」

「いやいや、そうじゃない。俺たちは表には出ないそんざいだから、知らしめていないのだ」

「ああーそうか。それは問題だな」

「しかし、今回は、少なくとも奴らには思い知らせないとな」

 そう言って中村主水が立ちあがった。

「おいおい、気が早いぜ。俺に任せろや」

 念仏の鉄が主水を制した。鉄砲玉のおきんも口を出す。

「そうだねぇ、あたしら必殺仕置人を甘く見るんじゃないよってね」

 お江戸組がわいわい言っている横では、長い髪で顔が隠れて見えない貞子が「呪う~」とつぶやきながらゆらり揺れて立っている。

 「我々妖怪一族も手を貸すでな」砂かけのお婆が子泣き爺と目配せをした。

「ジュワァ!」

「トゥー」銀色の巨人とバッタの仮面男も雄たけびを上げた。

 と、一人の男が立ちあがった。 

「そうだ! 我々日本人に手を出すとどれほど恐い目に遭うか……」

 その、髪を七三ニ分けた銀行員風の男が叫んだ。

「いまこそ、倍返しだ!」?

                      了

半沢.jpg[コピーライト]堺直人

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第四百六十三話_short 虎視眈眈と狙っている [allegory(寓意)]

 男はここ数日間PCに張り付いて事の成り行きを見続けている。

 かの国がどう動くのか気になって仕方がないのだ。

「書記長、なにがそんなに気になります?」

 たまりかねて第一部下が訊ねた。すると書記長と呼ばれた男は軍帽を少し跳ねあげて目を吊り上げた。

「あたりまえではないか。あの国が一人の捕虜にあの膨大な金を支払ったとしたら……」

「支払ったとしたら?」

「我が国にはあの国からさらってきた者が五万といるのだぞ。全員を人質にしたら一体いくらになると思う?」 

「なるほど! では、早速我が方も……」

 部下が脅迫動画の準備に向かおうとするのを男は制した。

「まぁ慌てるな。かの国が本当に払うかどうか見てからだ」

 すると賢い部下が言った。

「しかし、あれほどの大金、早く唾をつけないと、なくなってしまいますよ!」

「あっ! そうかっ!」

 部下の言葉は男を大いに惑わせた。このまま相場を見極めるべきか、さっさと手を出すべきか、脂肪の下に埋もれた胃がまたしくしく痛みはじめるのだった。

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                      了


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第四百六十二話_short テロビジネス [literary(文学)]

「オマエ、ココニビジネスニ来タ。ミーニハ金ナイ。オマエ、人質ニシテ金貰ウ。ソノ金デオマエカラ武器買ウ。オマエ仕事、ミー戦ウ。ギブアンドテイクダ、ドウダ?」

 上手いこと考えたな奴ら。春田は浅はかにもそう思った。だが、理屈は通っている。これで数億のビジネスになるのなら申し分ないではないか。

「Yes, I am Agree」

 それでは早速と、春田を人質として演出した動画を荒野で撮影し、国に向けた脅迫動画として仕上げているところへ、春田の知人が捉われて来た。

「あんたを助けに着たつもりが、捉えられてしまった……」

 申し訳なさそうに告げる前藤に、これはビジネスであり、危険はないのだと春田が説明すると、前藤は顔を歪めて「なんてことを!」と吐き、その次に「騙された……」と言ってうなだれた。 

 制作中だった動画に前藤の姿も加えられ、身代金が二倍に膨れ上がった状態で動画は世界に向けて配信された。 

  世界は大騒ぎになり、法外な身代金を要求された国は「テロには屈しない」として身代金の支払いを断固拒否、そのまま期日が過ぎてしまった。

「オマエノ国、ケチ。金払ワナイ。モウダメ。ビジネスハ不成立ダ」

 春田にビジネス価値がないとわかると、彼らはいとも簡単に方針を翻した。

「オマエ、ダメ。モウイラナイ。殺シタ事ニシテ放リダス。何処ヘデモ行クガイイ」

 彼らはジャーナリストである前藤にはまだ価値があるとして次の交渉への展開をはじめたが、春田には価値がないとして死体に見せかける合成用の動画を撮影した後、荒野に突き放した。 

 ようやく解放された春田だったが、ビジネスには失敗し、しかも世界に向けて殺されたように告知されてしまったいま、国に戻ることもできず、いやその前にこの地からどうやって脱出すればいいのかすらわからない。目の前に広がる広大な荒野を眺めながら春田は途方に暮れていた。

(こんなことだった可能性はまだ残されているかもしれない……最悪の悲劇よりはマシ? かもしれない話) 

                      了

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第四百六十一話_short 不信感 [literary(文学)]

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最初は友達の裏切りだった。まだ子供だったが、親友だと思っていた祐二が僕を虐めているグループに加わったのだ。祐二は虐めから逃れ、僕は学校を変わり不信という言葉を知った。

二度目は母の裏切りだった。中学生の僕を捨てて母は知らない男とどこかに消えた。父はショックのあまり自暴自棄になり酒に溺れて病気で死んだ。僕は施設に引き取られて不信の意味を知った。

三度目は大人になってから赤の他人に騙されたときだ。お金が全てだと思う人間に成長していた僕は、うまい話に乗ってしまった。ようやく作った僅かばかりの貯金を全てだと失い、僕は誰も信用できない人間になった。

この世には信じられるものなど何ひとつない。親も子も、友達はおろか隣人も仕事仲間も、神や仏さえも信じられない。それどころか自分さえも。そうだ、自分だけは信じられる、己がすることは間違いないなんて思っているからこんな目にあうのだ。僕はそう気づいた。

自分自身を信じられない僕は、いったい何なのだ?

自分を疑ったとき、僕は僕ではなくなっていた。

僕は本当に存在しているのか?

自己の存在を疑ったとき、僕は僕が存在していないことに気がついた、

僕は最初からこの世にいなかったのだ。

                      了


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第四百六十話_short 帰省 [literary(文学)]

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帰ってくるらしい。

長い間音沙汰すらなかったのに、どうしていま? そう問うてみたいが久しぶりに帰ってきた奴にそんなことを聞くことはできないだろう。

かつてこの場所で暮らしていた、ここで我が物顔で生きていたのは確かだが、もはやそのことを人々から忘れ去られてしまうほど遥か昔にここを去った奴ら。

帰省する。

そんなメッセージを送ってくるなんて。

まさかいまさらそんな日がくるなんて。

故郷を懐かしんで帰って来るのなら許せるだろう。だがそうではないのだ。移り住んだ場所に住めなくなって帰ってくる、つまり一時的な帰省ではなく本当に帰って来るという。

ダメだ。征服されるだけならまだしも、我々は滅ぼされてしまうだろう。遥か昔に地球を去っていった種族に。

人類以前、地球に君臨していた種族の宇宙船団がすぐそこまで接近している。

                      了


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第四百五十九話_short 駄作家 [literary(文学)]

駄作だ。

一行目を書いた時点でそれがわかる。

自分が何を書いているのか、そしてそれがいいものなのかどうか、そんなことは一流作家でなくともわかる。

普段書いているものが素晴らしい作品であるとは言わないが、少なくとも自分で納得できるレベルの線引きくらいはあるのだ。

書きはじめた時点で自分が乗っているかどうか、ひと息にかけるほどの勢いがあるかどうか、そんな感じが書いているものにそのまま現れる。それにどうしてもなかなか書き出せないようなことみある。そんな時に無理やり書いている今のような状態では大抵ろくなものは書けない。

だが、毎日書き続けるのだという自分自身に課した宿題をないことにはできない、一度諦めたらそれはさらに次へつながってしまうから。

つまらない日常を描いたつまらない物語から抜け出すために無理やり何か小さな事を起こしてみる。そもそもつまらぬ日常に起きる事件などやはりつまらぬものだから、物語は相変わらずつまらないままだが、それでも一歩前に進んだような気になる。それでまたつまらぬ文章がつまらぬ内容で膨らんでますます駄作の臭いが増していく。

そこでふと気づくのだ。

これは何かに似ているなと。

日々漫然と過ごしている私自身の生活。何事も起こらない代わりに何の意味も感じられない日常。それでも生きていくために何かをしているフリをして食べて寝て生きていく。生きてるだけで意味があるのだと言い訳をしながらそれでも前へ進まなければと思って意味のないことを続けていく日常。

人生とはそういうものだ。駄作を綴る駄作家はそう思う。

                      了

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第四百五十八話_short 新たな相手 [literary(文学)]

 結局去年も婚活を実らせることができなかった。

昨今はみんな婚期が遅くなっているのでさほど気にしてこなかったのだが、四十の声が聞こえてくるとさすがに少しは焦りの気持ちが浮かんでくる。とはいえ相手が見つからないのだからどうしようもない。

一年前の今時分も同じようなことを思い、今年こそと決意してターゲットを二人に絞り込んだのだが、なんのアプローチもできないまま月日が過ぎてしまい、気がつけば暮れ間際になって二人とも相次いで他の女と婚約してしまった。

「あーあ、もうこの人しかいないと決めていたのにぃ!」

思わず口にするとシングル仲間の祐子が「ええーっ? 誰々?」と聞いてきた。

「うん、向井くんかぁ西島くん」

 

「なんだぁ、一人に決めてないじゃない」

だって、一人になんて絞れないじゃない。向井くんは人気ナンバーワンだし、西島くんは昔から好きだったのに去年あんなに人気が出るとは思わなかったんだもの。

「そんな人、うちにいたっけ? どこの向井くんと西島くん?」

 理くんと秀俊くんだよって言うと、なぁんだ芸能人の? ばっかじゃないのと言われてしまった。

img100107185404_p.jpg[コピーライト]向井理

 なによ、私が芸能人をターゲットにして何が悪いよ。そんなものわからないでしょ、出会いなんて。

 選ばれるのは一人だけど、女であればみんなに権利はあるんだから!

 でももう言っても仕方がない。新しい人を見つけなきゃあ。

 前から気になっていたのは、ちょっと若いけど建くんと翔平くん。今度は念のために年相応に雅治くんもリストに入れておこう。

 新たなターゲットを決めてしまうと少し気分が和らいだ。あとはテレビを見ながら念を送るだけだ。

「新しい彼を今度は三人も決めたから、もうどれか私のものよ」

 ドヤ顔で言い放ったが、祐子はもう私の話なんて聞いちゃいない。

                      了


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