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第七百四十話_short 右脳の人 [literary(文学)]

第七百四十話_short 右脳の人

 ウェブビーコン方式で解析を行う場合、URLにパラメータを埋め込んで……

 さっぱりわからない。これは日本語なのか? インターネットウェブなんてものをいまさら学んでみようと考えたのが間違いだった。

 今年六十歳になる重吉はそう思った。還暦を迎えることを機会になにか新しいことを始めようと思い、そうだ、最近流行りのITとかいうものに挑戦しようと思ったのだが。

 購入してきた初心者向きの本を開き、一ページ目から躓いた。書いていることがさっぱりわからないのだ。メールマガジン、リスティング広告、この辺までは知っている。ところがDSP、PKI、リファラ、ランディングページ、クローラ……なんのこっちゃ? いきなりそういう用語がバスバス出てきて、もうそれだけで理解不能なのだ。 

 重吉は、これでも若い頃は数学や物理学は得意な方で、理数系なら任せておけと思っていた。しかしこれは理数系なのか? 外国語じゃないのかしらん? そう思いながら何度も何度も同じページを読もうとするのだが、日本語で書いてあるのにさっぱりわからない。重吉の左目がなんだかじんじんしてきた。

 重吉は少し前に右目を悪くして、見えるには見えるが文字等の細かいものはほとんど、いたすべて左目だけで読んでいる。それがもう習慣になってしまっているので、いまさら不便に思わないのだけれども、細かい文字の本を読むときだけは、左目を酷使しているような気がするのだ。

 おかしいな、こういう理系の本はすらすら読めていたはずなのに。

 重吉はふとあることを思い出した。脳の話だ。身体の右半分は左脳に、左半分は右脳に支配されている。そして、左脳は文章や理屈を、右脳は絵画や音楽、芸術を主に司る脳であるという話だ。

 もしかして……重吉は思った。

 わしは左目だけでこの本を読んでいる。その情報は右脳に入ってくる。ところが感性に特化した右脳ではこんな理系情報を処理することができないのではないだろうか?

 もう一度WEB本に左目をやってわかった。書かれている用語のすべてが、意味を伝達する代わりに、楽しそうに踊ったり歌ったりしているように見えるのだ。

脳.gif 

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第七百三十九話_short 世界を変える人 [literary(文学)]

 おお、どうした? 父親に叱られたのか。なになに? お前はなんでなんでって余計なことを訊きすぎる? 黙って親の言うとおりにすればいいのだだって? 

 いやいや、お前の父親は頑なでいかんな。もっと柔軟な人間にならないと大成はできんと、あいつが子供の頃から言ってやってたんだがの。

 その点、お前はええぞ。その、なんで? と訊ねるのがいいんじゃ。いろんなことに「何故?」と思うような人間こそが、これからの世界を変えていくのじゃ。お前はそのままでええぞ。

 源次郎は、小言の多い父親とは違ってやさしくて理解のある祖父なのだ。その祖父にかわいがられている源太だが、祖父に言われなくともさまざまなことに疑問を持つ性格だった。

「ふうん、じゃあ、おじいちゃん。どうしておじいちゃんはいつも違う女の人と遊びにいくの?」

「おじいちゃんはどうして色街ってとこが好きなの?」

「どうしておじいちゃんはお馬や自転車やボートが好きなの?」

「どうしておじいちゃんは毎日酔っ払いになるの?」

「どうして? どうして? どうして……?」 

疑問.jpg 

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第七百三十八話_short 電子笛 [fantasy(妄想)]

 夜中に目が覚めた。

 どうやら昨夜は飲みすぎたらしい。普段なら朝まで熟睡して目が覚めるようなことはないのに、こんな中途半端な深夜に目が覚めるとは。酒を飲むと喉が渇いて目が覚めてしまうのだ。しかし、そんなに飲んだかなぁ? トイレに行こうと思って頭を上げてぎょっとした。枕元、というかベッドサイドに誰かが立っているのだ。

 泥棒? そう思いながらもなぜだかそれ以上驚くこともなく冷静な声で言った。

「だ、誰?」

 暗闇に目が慣れてきて、そこに立っているのは白い髭を生やした老人であるらしいことが見えてきた。

「ワシは神じゃ」

 老人が言った。

 は? 何言ってんの? そう言おうとしたら先に老人が言った。

「お前は選ばれたのじゃ。この国を、世の中を良くするためにな」

 え? 国? 世の中? 頭の中が混乱した。

「お前は昔、楽器をやっていたな。サックスかセックスか知らないが、そんな楽器を」

 なんだ? なぜそれを知っている? 確かに俺は学生時代にサックスホンを吹いていたが……それとこの爺さんと何の関係が?」

 老人はどこから取り出したのか、銀色に輝く棒のようなものを差し出しながら言った。

「これは世直しの笛じゃ。これをお前に授けよう」

 老人がその笛を突出したので、自然とてが出て受け取った。

「は? 世直しの笛?」

「そうじゃ。お前はその笛を持って出かけるのじゃ。そこいら中でその笛を吹けば、世の中の争いごとや悪しきことどもがすべて良い方向に転がるであろう。若い頃に培った笛の技術でそれを実行するのじゃ」

 驚いた。 

「え? 俺が? 選ばれた? 世直し?」

 耳に入った言葉の断片を俺は繰り返した。

「そうじゃ。お前はこの笛で世直しをするために選ばれたのじゃ。さぁ、吹いてみい」

 俺は言われるままに笛に口を充てて息を吹き込んだ」

 すーっっっ……。

 音が出ない。

「鳴らない」

 そう呟くと老人が言った。

「おお、すまん。それは電子笛といって、ほれ、この電源をコンセントに差し込んでつなぐのじゃ」

 なんだか状況にそぐわない気がしたが、言われるままにでンゲンアダプタをコンセントに差し込んで笛につないだ。それからもう一度楽器をくわえて息を吹き込むと、夢のような音が出た。サックスでもない、フルートでもない、ましてやただの笛でもない、まさに天上の響きとでもいうような音色。

 俺はすぐに昔覚えた運指を思い出して、古いラブソングのメロディを吹いてみた。

「おお! さすが選ばれし者。そうじゃ、それでよいのじゃ。そのような美しい調べで、世の中を直すのじゃ」

 夜中だというのにたたき起こされた俺は外着に着替えて楽器を胸に抱いた。

「さぁ、調べを奏でながらこの部屋から出発するのじゃ」

 本当に夢幻のような状況の中で俺は神と名乗る老人に言われるままに楽器を吹いた。またしても天上の音楽が鳴った。俺は吹きながら玄関に向かった。と、いきなり音が止んで、俺の息の音だけになった。

 ひゅー。

 世直し電子笛から電源コードが抜けてしまったのだ。

 振り返ると、爺さんはもういなくなっていた。 

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第七百三十七話_short 壊れる [literary(文学)]

 最初にビデオが壊れた。長い間使っていなかったのだが、たまたま家の中で見つけたビデオを見ようとしたら、テープを巻きこんでしまった。考えてみればもう古いタイプであり、壊れてもおかしくない代物だ。修理を考えたけれども、もうビデオを見ることもあるまいし、うちにはDVDプレーヤーがあるのだからまぁいいかと処分することにした。テレビの下がちょっとすっきりしたので、これもありかなと思った。

 ところが間もなくDVDプレーヤーがおかしくなった。番組の録画ができなくなっているのだ。留守の間に放映されているドラマを録画してあとで楽しむはずだったのだが、どれもこれも録画されていないのだ。

 この機械はそんなに古くないはずだぞと思って購入時の書類を探してみたら、もうすぐまる五年になるところだった。幸い、購入時に長期保証というものに入っていたようで、あと数日でそれが終了になるところだったので、慌ててメーカーに修理依頼をした。数日後にやってきた修理のおじさんが「よかったですねえ、ぎりぎりで保証が効きますね」と言われて、本当にそうだと思った。

 この上まさかテレビまで……? と思っていたら、テレビではなく食器洗い機が動かなくなった。

 おいおい、ビルトインの食洗機が動かなくなったらただの箱がキッチンの大事なところを占有してしまうじゃないか。この機械は新築で入居したマンションに備え付けられていたものだから、もう十年以上も使っていることになる。しばらくは食器を手洗いしていたが、やはり大きなただの箱がキッチンを占有しているのが我慢できなくて修理を依頼した。約二万円かかってしまった。

 もうこれくらいにしておいてよな。そう思っている矢先、妻が叫んだ。

「あら? 掃除機のスイッチが入らない!」

 調べてみると確かにスイッチが入らない。いろいろいじくっているとどうやらスイッチの接触が悪くなっているようだ。私は電気修理屋ではないけれども、これくらいなら直せそうな気がして分解してみたら、もとに戻せなくなってしまった。修理か購入か。妻と一緒に考えた挙句、電気店に赴いてあまり高くないのを手に入れた。

「どうだい? 新しい掃除機は?」

 妻に訊ねると、複雑な表情で答えた。

「うん……掃除機の調子はとてもいいんだけど……今度は洗濯機が……」

 洗濯機は動くには動くのだけれども、しばらくするとエラーが出て止まってしまう。さすがに水モノは直せない。メーカーに修理を依頼して二万円を支払った。

 その後も、電灯が切れる、カメラが使えない、エアコンが効かなくなる、パソコンが壊れる、携帯電話が使えなくなる、テレビの写りが悪くなる、車の調子がおかしくなる、自転車が壊れる、冷蔵庫の冷えが悪くなる、家中のありとあらゆるものが壊れていった。

 この家に棲むようになって十数年。ほとんどの家電はその時に購入したものだ。家電製品というものは壊れないものだと信じてきたけれども、やはり十年も使うと壊れてしまうのだ。修理にやってきたおじさんたちがみんな言っていた。

「家電はだいたい十年も使えたら充分ですよ」

 しかし、あれもこれも一度に壊れてしまうなんて。先月と今月の出費はいったいいくらなんだ? 修理代だけでなく、新たに買ったものもいろいろある。封書で送られてきたクレジット会社の請求書をみて、心臓がぎゅんと鳴った。私の給料より多い金額。わかっていたけれども、こうして突きつけられるともう……。

「あなた、どうしたの!?」

 妻が叫んだ。

 私はなぜか全身真っ裸になっていた。わははははと奇声を上げながらクレジットの請求書を引きちぎって踊り狂っていたのだ。 

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第七百三十六話_short 超満月 [literary(文学)]

「ほら、見てこらん」

 父さんが指さしながら言った。

 その指の先にはいつになく白く輝くまんまるの月があった。

「今日のあの月は特別なんだよ」

 父さんはどこかで仕入れてきたのだろう、さも物知りであるかのような口ぶりで特大の月の話をし始めた。

 あれはスーパームーンといって、月と地球の近点、つまり一番距離が短くなったときに見える月なんだ。ほら、月は地球の周りをこうして回っているけれど、その軌道は楕円形になっていて、楕円形の一番距離が短いときの……

 説明なんてどうでもよかった。ただ空に浮かぶいつもの月が、いつもよりも少しだけ大きく明るく感じることが不思議だった。その月に吸い寄せられるような気分でずっと空を見上げていた。

 あんなに大きな月を僕は見たことがなかった。その上月はさらに大きく……大きくなって?

「お父さん、月が膨らんでいない?」

「「だからスーパームーンだって」

「そうじゃなくって、ほら、よく見て?」

 え?

 父の視線が月に釘付けになったかと思うと、顔色が赤くなり、大声で叫んだ。

「つ、月が落ちてくる!」

 そうだ。月が落ちてきている。

「に、逃げろ!」

 逃げろと叫んで父は僕の手をつかみ走り出したが、しかし、どこへどこまで逃げたらあの落ちてくる月から逃れられるのか。二千二十五年九月二十八日のことだった。

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第七百三十五話_short 順番 [literary(文学)]

 なんかドキドキする。自分の番じゃないことは重々わかっているはずなのに。わかっているのにもしかして次に自分の名前が呼ばれたらどうしよう。そう想像してしまうのだ。

 学校に行ってた時にもそんなことがあった。成績上位十人だけが名前を呼ばれる、確かそんなシステムだった。私なんか呼ばれるはずはないとわかっていながら、つい期待してしまう。もしかしたらなにかの間違いで十番目位に呼ばれるかも……だが、やっぱり私の名前が呼ばれることはなかった。

 成績は悪かったけれども、いささかルックスには自信があった。だから美女コンテストなんていうのにも出た。あの時もそうだった。コンテストの終わりに、トップ3の番号が順に呼ばれるのだ。このときは私は自信があったから、必ず自分の番号が読み上げられると信じていた。準ミスが二人呼ばれて、ああ、ついに自分の番だと思って一歩前に出ようとしたその時、違う番号が読み上げられた。

 がっくり。そう、期待しようがしまいが、私は呼ばれたことなんてないのだ。 

 あれからずいぶんな時間が過ぎていま。いまはまだ自分の名前が呼ばれる時ではない。

 隣室のかなり年配の男の人が呼ばれたのは三日ほど前。そうだよね。きっとあの人だと思ってた。たぶん今日は、私の隣のおばあさんだと思う。私の予感はたいてい当るのだ……自分のこと以外はね。

 夜になって電灯が次々と消され、私は眠くなってまどろんだ。眠っているのか起きているのか、私はベッドに寝ているような気もするし、ベッドの片隅に座っているような気もする。

 そしてしばらくすると声がした。

「さぁ、あなたの番ですよ」

 隣の人のことだと思っていたが、そうじゃなかった。 

 私は起き上がり、自分の身体からすーっと天井へと上がっていった。

幽体離脱.jpg 

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第七百三十四話_short そっくりさん探し [literary(文学)]

 世の中には自分に似た人が三人入るというのだが、そういうことは本当にあるらしい。

 最近世界中で、自分に似た人を探すサイトが流行っていると聞いて、そのサイトを探し出し、早速、写真や名前を登録した。

 ところで、写真というものは撮り方によっていかようにもなるもので、最初私は家の中で自撮りをしたのだが、蛍光灯のせいか、妙に生々しくって不細工に写っている気がした。そこで外の光で撮ってみようと考えて、コンビニの明々とした店内ライトを顔に照らして撮ってみると、まぁこれが見事に顔を白飛びさせて小ましに自撮りができた。もちろん顎を引いて小顔効果を狙うことも忘れなかった。

 こうして撮った写真をアップして待つこと二日ほど。サイトをみると、二人ほどそっくりでは? という候補が上がってきていた。

 どれどれ? 興味津々で見てみると……

 一人目。どこかアジアの小娘。若いが下膨れの姉ちゃん。なによこれ。つまりブスの代表が私に似てるっていうの? ちっともにてないよ。私は即効で却下ボタンを押した。

 二人目。おばさん! 日本人? イy、中華民族だね。それにしても四十代? いや五十がらみの不細工な太ったオバさん。これならさっきの小娘の方がまだまし。いずれにしても似ているとは思えなかったので却下。

 何よこのサイト。壊れてる? それとも似た人が見つかるっていうのはデマ? 私は少々不愉快になった。それでも気になってその後も何回かサイトをチェックしたが、似ている人は未だ見つかっていない。

 ……

 同じ頃、世界のどこかで。同じサイトを見ながら談笑している若い美系たち。

「ねえねえ、見て。こんな人までアップしちゃってる」

「どれどれ? 日本人? あらまぁ、無理しちゃって」

「顔を真っ白に飛ばして……ライトね」

「顎を引きすぎじゃね? 顔が半分くらいになってるよ」

「それにしてもこんなブスが自分に似た人を探してどうするのかしらね?」

「いやいや、ブスはブスなりに、似た人が集まってくるんじゃないのかしら?」

「そうよね。ブスだからって差別しちゃダメよね!」

 きゃはははは。 

 美系の人間は、ブスにはその自覚がないということを知らないのだった。

TwinStrangers.jpg

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第七百三十三話_short 中華ショック [literary(文学)]

 「これ、ひとつのラーメン美味しいね」

 妻は大衆中華店のラーメンをすすりながら言った。

「ああ、ここは親父の代から美味いそうだ」

「親父、感謝します」

 最近、妻の言葉がおかしい。なんでそうなったかというと、そう、あの時からだ。

 ネットショッピングが大好きな妻には、無駄遣いをするなということと、悪質ネットには気をつけるようにと常々言っていたのだが……。二週間ほど前に、とうとう悪質な詐欺サイトに引っかかってしまったのだ。金額は二万ほどなので、俺に言わせればまぁ諦めのつく金額だと思うのだが、財布を管理している妻にとっては大きな金額らしい。

 あの直後はカードを止める、銀行出カードの再発行をする、消費者相談窓口に電話する、カード会社に相談する、といろいろ大変だったようだ。

 それでその問題の悪質サイトというのがどうも中国人がやっているらしく、見てみると明らかに書いてある言葉がおかしい。日本語なんだけれども、まるで翻訳ソフトを使ったままのような感じなのだ。

「おいおい、こんなバカみたいな文章を読んで気がつかなかったのか?」

 俺はそう言ったが、妻はまったく気づかなかったそうだ。その後も何度も何度もそのサイトを確認して、本当にこれって詐欺なのかしら? 本当はちゃんと品物が届くのじゃあないかしら? そう言っていたが、一週間過ぎても二週間過ぎてもついんい商品はとっどかなかった。

 結局、現在はカード会社に依頼して、お金を取り戻す算段をしている最中なのだ。しかし妻にとって、金額そのものもさることながら、だまされたということがよほどショックだったようで、何度も何度も見ていた中華サイトのモノの言い方がすっかり身についてしまったらしい。俺にとってもこっちの方がよほどショックだ。

「ああ、美味しかったラーメンに出会えて光栄です。さあ、私たちはきっとまたここに来る約束ですね?」

 いつかショックから抜け出して元の妻に戻ってくれるのだろうか。 

 中華そば.jpg

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第七百三十二話_short 騙されてる? [literary(文学)]

 こないだから欲しいなと思っていた品の出モノが、インターネットで見つかったんだよ。

 ブランド物のジャケットなんだが、海外ブランドだけに高く手手が出なかったんだよね。でも、ネットで探せば安いものが見つかるかもしれないと教えられて、数日前から一日中ネットで探しまわっていたのだ。百貨店等で買うよりも安いものはすぐに見つかったけれど、十%くらい安くたって……君も知ってるだろう? お金のない僕には焼け石に水なんだ。

 しかし、ネット世界は広いものだな、探せば探すほどいろいろな販売業者が見つかって、その中にはと鉄もなく安い店もあったりするんだね。

 それで今日の午後、ついに半額近い価格の物が見つかったよ。僕は即効でクリックしたね。

 購入するには、住所や氏名を入れてまず登録しなくちゃあならなかった。で、最後に購入確定ボタンを押すと、今度は支払い情報を入力しろってなって、僕はクレジットカード番号とかを入れたね。それで、高にゅ確定。

 探せばあるもんだ、安い出モノが! って喜んでたんだけれど……人間ってほら、モノを買った後でも気になって、もしかしたらもっと安いのがあるかも知れないってなるじゃない? よせばいいのに買った後もまた探してたんだよ。そしたら、値段は同じくらいだけど、ちょっとしたおまけ付きっていうのが見つかってさ、さぁ、どうしよう。さっきのキャンセルしようかって思って……。さっきのはどのサイトだったけ? あ、そうそう、購入確認メールが来ているはずだって。

 で、メールを見たわけさ。そしたら来てたね。「ご購入ありがとうございます。当店でのご利用を、私たちはとても光栄に思います……なんてね。で、その文面を見てたらなんだか変な感じ。日本語がおかしいんだよ。「これからもよろしくお願いされたい」だとか、「あなたのご意見をいただいたらさらに私どもの努力が上がって」とか、なんだか変。

 そういえば店の名前もなんか変な英語みたいな意味のない感じだし。

  でね、もしかしたらって思ってまた検索したあけよ。そしたら「詐欺サイトにご注意!」なんてのが見つかって、そう言うのを調べれば調べるほど僕がかってしまった店が妖しく思えて。

 他にはないような値段、日本語がおかしい、店の電話番号の記載がない。こういうのって中国人がやってる悪徳詐欺サイトに多いって言うんだよ。まいったよ。全部当てはまるじゃないか。でも、カード切ってしまったんだよ。どうすりゃあいいんだろう。

 僕の話を訊いてくれていたドン介が言った。

「そりゃあまず、カードを止めなきゃあ。で、実際に詐欺だってわかったら警察にも知らせなきゃあ、だと思うよ。ところで、それはなんていうサイトなんだい?」

 僕は答えた。

「ほら、こないだ君が教えてくれたじゃあないか。服とか安いって。dnskyって名前の」 

 ドン介はちょっと黙っていたが、眉をしかめて言った。

「お前、俺が中華詐欺師だって思うのか? そのサイト、俺がやってるんだよ! 日本語が変で悪かったな!」

詐欺サイト.jpg

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第七百三十一話_short キャリーバッグ [literary(文学)]

 歩道の脇にキャリーバッグが捨てられてあった。海外旅行とあではいかないが、国内四泊五日程度の荷物が入るであろうサイズの黒いバッグで、粗代ゴミ回収のシールが貼られている。取ってのところにはブランド名を記したタッグもついていて、結構いい物だと思われた。

 あれ? これ、捨ててあるのかな? まだきれいに見えるんだけど。

 私はモノ拾いではないけれども、最近、家の中の物を整理してはフリーマーケットに出しているということもあって、とても気になった。

 これって、ちょっと拭いてきれいにしたら、フリマで売れるんじゃあないか? んーっと、五百円、いや、千円くらいにはなるか? なんかもったいないな。中を見たいけれども道端では開けられないな。

 周りを見渡しながらどうしようかと考えた。

 これをフリマで売れば多少の儲けになる。買った人は、こんないい物が千円くらいで手に入るのなら、それはいいことだ。それにこのシールを元の持ち主に返して上げられたら、これもまた元の持ち主にとっては節約になるよな。

 私はとりあえず持ちかえってみることにした。キャリーの取っ手を伸ばして動かしてみると、コロもちゃんと動いてくれて何も壊れていないようだ。ゴロゴロと引っ張りながら家に向かった。

 しかしちょっと違和感。これって、ちょっと重くないか? 中身が空ならいくらこの大きさでも軽く持ち上がるはずだ。中になにか入っているのかな? 持ち上げてみようとするが、片手では持ち上がらなほどの重さがある。

 あれえ? 何が入っているんだろう。

 もしや、犬とか猫の死骸が出てくるんじゃあないだろうか?

 奇妙な想像が膨らんだ。

 まさか。しかし、いまどきのことだありうるかも。いや待てよ。このサイズだと、人の子供でも入りそうだ。胎児だとか、いやそれどころか幼児だって。近頃物騒な事件があるものな。母親が子供を殺したというような……。

 想像はどんどん膨らんでいく。

 いや待てよ。このサイズだと、小さな大人だって押し込めるかもしれない。痩せた老人とか。

 介護に疲れた人が惚けた親を絞めて……。

 わっ! 私は思わず声をあげてキャリーの持ち手を離した。キャリーは倒れることもなくことことことと少し揺らいでから止まった。

 気持ち悪い……。私はよからぬ想像をしているうちに、家の方向から外れて元の場所に戻ろうとしていた。

 こんなもの、持ち帰ろうだなんて。家に持ち帰ってそんなものが出てきたらどうするんだ? 取り返しがつかないぞ。警察に知らせても疑われるのは私かもしれない。

 私は足を速め、黒いこぎれいな粗代ゴミであるキャリーバッグを元通りの場所に戻した。 

キャリーバッグ.jpg



 

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