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第七百二十三話_short 左遷の理由 [comedy(笑噺)]

「ど、どうして私なんですか?」

 目の前にいる本部長は、わが社の人事責任者だ。本部長の心ひとつで我々はどこにでも動かされてしまう。会議室に呼び出された私はいきなり子会社への出向を打診されて仰天してしまったのだ。子会社への出向というのは、わが社の中では左遷と同じなのだ。このところ業績が振るわない中で、私は比較的売上を落とすことなくがんばって来たのに、なぜ? おそらくもう若くないことが理由なんだろうとは思うが。

 だいたいこの本部長は、あまりよく考えもせず思いつきで人を移動させるという噂だ。きっとこれもそんなことに違いない。なんとかここで踏ん張って本社に残してもらわないと……。

「本部長、理由を、私が子会社に出向しなければならない理由をおっしゃってください」

 本部長は少し面倒くさそうに口を開いた。

「理由か……理由はだな……」

「理由なんてないんじゃないですか? 私がもうロートルだからじゃあないんですか?」

「ロートル? ははは、そんなんじゃない。これは私の意思じゃあないんだよ」

「なにをおっしゃいます。人事はあなたの意思じゃあないですか!」

「ところがだな、私の意思じゃないんだ。君は知ってるかね? サブリミナル・マインドって言葉を」

「サブリミナル? な、なんです?」

「人間はな、自分の意思で行動していると思っているが、実はそうじゃない。心の奥底にあるサブリミナル・マインド、つまり潜在意識によって動かされることもあるんだ。そしてこれもそういうことなのだ。私の意思ではなく、潜在意識がそう決めたことなのだ」

 本部長、なにをのらりくらりと。なんだって? サブリミナル・マインド? いい加減なことを! 私は意識を集中させて考えた。

「本部長……それは違いますよ。あなたの背後霊ですよ」

「なに? 背後霊?」

「そうです。決めているのはその、サブリミナル何とかじゃなくって、あなたの背後霊です。ほら、いまもあなたの後ろに……」

 本部長は肝が小さい男だという話も聞いたことがある。

「ほら、ほらほら! あなたの後ろにいま!」

 本部長は何度も後ろを振り返って背後霊を見ようとするが、そんなものいるはずがないのに。

「背後霊のいいなりになっていたら、あなたも呪われてしまうかもしれませんよ」

「の、呪われる? なんじゃそりゃ?」

「背後霊のいいなりになって私を左遷したりしたら、あなた自身もすぐに同じ目に遭う、そういうことですよ!」

 本部長は子供みたいに眉をしかめ、肩を竦ませながら、再考してみると言った。もう行っていいと言われて、私は恐ろしげな表情をつくり上がら会議室を出て行こうとすると、本部長、よほどびびっているのか、「いや待て、行かないでくれ。ほんとうにここにいるのか?」 と何度も訊くのだった。

背後霊.jpg

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第六百七十一話_short お仏壇の前で [comedy(笑噺)]

 チンチーン。

 富子は仏壇の前で手を合わせた。毎朝こうやて親から受け継いだご先祖様にお水を備えてお線香に火を点けるのがもう長年の習慣になっている。いまどき若い世帯で、と言っても富子はもう五十を過ぎているのだが、仏壇のある家も少なくなったし、律義に毎朝お参りをする人も少なくなったというが、一方ではこうして律義に仏壇を守っている人もいるのである。

 だが、富子は習慣だけでそういうことをしているわけではない。毎朝仏壇に向かって祈り、願うことが大事だと考えているのだ。つまり、「願えば叶う」と思っているのだ。それと少々の愚痴をこぼすひと時でもあった。

 しばし手を合わせた後、仏壇の前に置かれた夫の写真を見つめながら、富子は軽い溜息をついた。

「はぁー。それにしても暑いわねえ。今年も残暑って厳しいのかしら」

 誰に言うともなく、いや、夫の写真に向かって独り言をいう。

「それに、景気回復だなんてもう何年もいわれているのに、さっぱりよくならない。私ごときの働き口ではちっとも豊かになんてならないわ。なんかこうもっと大きなお金になるような話はないものかしらねえ」

 言っても仕方のないようなことが口元からこぼれる。

「もう少しこの人がしっかりしてさえいてくれたらねえ。ウチの経済はもう少しマシだったんじゃあないかって、思ってしまうわ。ほんとうにこの人ったら、要領悪い、働き悪い、頭悪い、性格悪い、顔悪い、口臭い……あら? これは違うか……なんにしてもなんでこんな人と結婚しちゃったのかしらねえ……」

 富子が言い終わるとしばらく蝉の声だけが聞こえていたが、後ろの方からためらいがちな声がした。

「なぁ、富子。ぼちぼちやめてくれないかなあ。そんなところにわしの写真をおいて厭味ったらしく愚痴をこぼすいやがらせは」 

線香.jpg 

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第六百六十六話_short ダミアン [comedy(笑噺)]

 気がつきましたか? そうです、今回は第六百六十六話。666なのですよ。これはいわゆる悪魔の番号とかいう……。

 でもね、そういうのもキリスト教信者である異国の人が言ってることであってね、日本人である私たちにはあまりピンとこないわけで、ただ昔イタリアのホラー映画かなんかで体のどこかに666というあざがあったらそれは悪魔の申し子であるなんていう設定で、ダミアンって子供が登場して、それで有名になっちゃいましたね、悪魔の番号として。

 そんなわけだから、キリスト教信者ではない日本人は面白がって車のナンバーを666にしてみたり、6月6日6時からお楽しみ宴会を開催してみたりしますね。まぁ、コックリさんにしても都市伝説にしても、まるきり信じ込んでさえいなければ怖いことでもなんでもないわけですからね、平気なんです。

 ところが。ところがですよ、実際にその悪魔の数字が自分の体に見つかったとしたらどうですか? キリスト教は信じていないし、仮にキリスト教徒だったとしても、そんなものは映画の中のお話でしょ? なんて言ってられます? 

 最近頭の中にできものができちゃったみたいで、病院に行ったんです。これまでそんなことってなかったし、夏だし、暑いし、汗疹でもできたかなってしばらく放置していたけれども、どうにもかゆくって。自分では頭の中なんて見れないから、どうにも我慢できなくなっていったんです。すると、まぁ大したことありませんなんて言いながら塗り薬をくれた医師がポロリと言ったんです。

「それはそうと、あなたの頭皮には珍しいっモノがありますね」

 なんて。は? 珍しいって? なにかありますか?

「いやいや、よくあることですけどね、頭の中の痣なんて。でもあなたのは綺麗に数字が並んでるんですよ」

 ええ? いままでそんなこと知らなかった。自分では見れないし。で、数字って?

「ええーっと、これは、666って読めるんですけどね……? あれ? 666ってなんだか有名な数字じゃなかったですかねえ?」

 こんなことがあてしばらくどうしようかって思いました。そんな、悪魔の数字が自分の頭にあるだなんて。

 自分自身で確認したいと思って一生懸命鏡を合わせてみようとしたんですがね、それは難しい。はたと思いついてスマホカメラを頭に向けて撮ってみました。そうしたらね、かろうじてそういうものを写すことができました。

 確かに666に見える。ただし、洋数字じゃなくって漢数字。つまり、六六六。

 ええーっつ? 六六六って漢数字でもやはり悪魔の数字なのかしらん?

 思いました。こんなことってあり? 誰かに相談すべきか。いやいやこんなこと相談して何になる? 

 塗り薬が切れたころにもう一度病院に行く機会ができたので、診察のときに医師に行ってみました。

「先生、確かに私の頭の中に数字みたいなのがありますね。でも先生漢数字とはいわなかったじゃないですか」

「ええ、確かに。666って読めるって言ったんですよ、確か。もう一度見せてください」

 医師は私の頭の中を見ながら言った。

「あれえ? こないだは数字だと思ったんですけどねぇ……これは六六六と読めなくもないけど、よくよく見たら少し違うような」

「はぁ? じゃぁなんです?」

「ははぁ、これは、六じゃなくって、穴ですな。つまり、穴穴穴」

 なんだって? 私の頭の中は穴穴穴? 穴だらけ? 私は思わず声にした。

「そりゃ、ダミやん!」 

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第六百五十四話_short ややこしい店 [comedy(笑噺)]

 いらっしゃいませ。あら? 初めてですわね。どこでお知りになられましたの? はぁ、ネットで。なるほど、あたしのSNSをご覧になられたのね。なにになさいます? えーっと、ビール、ウイスキー、焼酎、お酒、なんでもご用意できますわ。あぁ、とりあえずビールね。承知いたしました……おどーぞ。こちらはつきだしでございますの。ええ、あたしの手作りですの。煮っころがし。チーズもあるわよ、ほら、おカマンベール。

 はい? あぁら、当店は別に女装バーってわけではないのよ。わたくしマスターが時々このように変身いたしますバーですの。

 ええ、お客様でね、美容師の方がいらっしゃいましてね、彼女にメイクしてもらいますのよ。

やだ。綺麗だって? まさかこんなおばちゃまを口説こうってんじゃないわよね。ダメよ、ダメダメ。わたしには妻も子供もいるんだからぁ。でも、あなた、いいオトコだから、わたし揺らいじゃうかも。うふふ。

 え? 最近、女装子ってのが流行ってるって? ああ、そうらしいわね。若い男の子が変身するんでしょう? もったいないわよね、せっかくいい男なのに。何が楽しいのかしらね、そんなことして。え? わたし? わたしはほら、もう何十年も前からやってるもの。趣味っていうより、癖よね、クセ。個性って言っていただいてもよろしいですわよ。

 面白いでしょ? ええ、普段はね、むさ苦しいマスターが一人でやっていますの。本日だけよ、こんなに華やかなのは。あなた運がよろしいわ。

 はい? そうでもないって? ま。おかしなことを。

 なんです? バーならいい男がいるかと思ったって? あぁら、もしかしてあなた、こっち?  こっちって、ほら、あっちだわよ。ややこしいわね。男好き、つまり、ゲイ……

 違うの? なんです? はい? えっ! うそでしょ。まさか。女たらしは相手にしたくないから、男同士ならちゃんとした男と知り合いになれるからだって? まあ、ややこしいことを。そんなにイケメンなのに、そう……本当は女性なの……。ホント、ややこしい時代になったものね。

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第六百五十一話_short こび弁慶 [comedy(笑噺)]

 「こぶ弁慶」という話を知っているだろうか。これは上方落語の演目で、とても不可思議奇天烈な噺なのだが、そのあらすじを言うと、京都のとある宿場に泊った男が、由緒ある壁土を食べたところ、首にできものができ、それがどんどん大きくなってしまう。やがてできものに目や口ができてしゃべり始める。「わしは武蔵坊弁慶だ!」と言い始め、やがてどっちがもともとの頭かわからなくなってしまうというようなお話なのだ。

 なぜこんな話を持ち出したかというと、実は二~三週間ほど前から私の首に膨らみができて、そrがどんどん大きくなってきたのだ。しかも先ほどのこぶ弁慶のお話と同じように目や口ができてしゃべり始めた。

 さすがに「弁慶である」とは言っていないのだが、これがまた低姿勢なことをいうこぶなのだ。

「ああ、どうもすみません。私がなんとかします」

「ああ、あなたはとてもいい人だ。私はあなたについていきますよ」

 相手かまわず低姿勢なことばかり言う。

 世の中的にはこうした低姿勢な物言いは決して悪いことではないかもしれない。むしろ商売人なら顧客から高評価を得ることができるだろう。相手の手の内に入ってしまうことによって気に入られることが商売の第一歩ともいえるほどだから。

 しかし私の商売はそういう類のものではない。相手を脅かすことによってビジネスを動かしているのだから。そう、つまり私の仕事は金融業。平たく言えば街の金貸しであり、その取り立てで飯を食っているのだ。

「おどりゃぁ、一体いつ金を返しやがる!」

「ひと月前に貸した百万、利子も含めて二百万、いつ返すつもりなんだぐるあ!」

 こうした脅しで貸金を回収しているというのに。

「ああ、大丈夫ですよ、あなた様のご都合のいいときに返してくれれば」

「もうそりゃあ、あなた様あっての商売ですから。いつでもいいですよ」

 私が脅した端からそんなことを言うので、困ってしまうのだ。

「おい、こぶ。おまえはなんでそんな低姿勢で、客に媚ばかり売っているんだ? こっちは商売あがったりじゃないか! おまえは弁慶なんだろう? ちっとは弁慶の強さを発揮してくれたらどうなんだ?」

 ついにたまりかねてそう言うと、首のそいつが言った。

「なんでっておっしゃいましても。なにしろ私は確かにこぶでできた弁慶ですが、

こぶ弁慶じゃあなくって”媚弁慶”なんですがな」 

 

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第六百四十六話_short 流行語 [comedy(笑噺)]

「その件、それがしにお任せくだされ!」

 営業の田中がそう言い放って飛び出していった。上司の山内は田中の後ろ姿を見送りながら目を細めて言った。

「なかなかあっぱれな奴よのう。成功した暁には、少しは褒美をやらねばならんのう」

 この部では唯一の女子社員……失礼、お局様の浜田女史以外にはだが……である広瀬が言った。

「あら、上様……褒美なら私もほしゅうございますわ」

「なら、おぬしも何か手柄をあげねばのうおなごとて余は甘くはせぬぞ」

 このところ世は歴史物が流行りのようで、女性たちの間でも歴女などという女子が現れて久しい。映画やテレビでも戦国時代や幕末を背景としたものも増えてきて、もとより時代小説が好きであった社長の影響もあって、うちの会社の中はみんな時代劇ンいかぶれてしまっているのだ。

 最初は広瀬あたりの若い女子が電話口で思わず

「わかりましたでござる!」?

 と言ったのを皮切りに、みんながそれを真似るようになり、みんなが面白がってさまざまな言葉を採用していくので、次第にそのような言葉が社内で定着してしまった。もはや誰もふつうンも言葉を使おうとしない。そんなことをすれば、ははあん、あいつは時代劇の言葉がわからないんだ、時代劇を見ていないんだ、と小馬鹿にされてしまうからだ。

 社内で流行している時代言葉は、取引先にも伝播していった。なにしろ電話口でも「~ござる」といわれるし、弊社を訪れるとみんなが「「拙者は」「わらわは」と言っているのだ。うつらないわけがない。

 そういうわけで、あくまでも劇中で使われる言葉であって、歴史的な言葉として正しいかどうかは定かではないが、少なくとも左様な言の葉が狭い世界で共有されたわけで、おそらく言語というものは斯様にして共有され、流行り言葉として伝播するもやがて通常の言語として定着していくのではなかろうか、拙者はそのように感じ始めているのでござるが、おぬしたちはいかように考えるのであろうか。

 今日のところは斯様なお話なのでござる……ござる。?

?るろうに剣心.jpg[コピーライト]和月 伸宏


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第六百二十三話_short お金の価値 [comedy(笑噺)]

 このところ”円安”とか”円高”とかいう言葉が往来きしているのだが、実のところどういうことなのかいまひとつわからない。そういうことに少しは詳しいと思われる長屋の玄さんに訊ねてみたのだが……。

「ちょっと前、そう1970年くらいまではな、1ドル350円と固定して決まってたんだよ。それがアメリカの経済状況が大きく変化して、いまのように1ドル百円という風に変わって来たんだ。つまりだなぁ、お金の価値がアメリカと日本で変わっているってことだな」

「価値が変わる? なんで変わるん?」

「そりゃあお前、力関係ってもんだわな、経済の」

「1ドルが360円……それが百円に……わかりにくいんですよぉ」

「ドルをアメリカ人、円を日本人と呼び変えたらわかりやすくなるんじゃねえか?

「1アメリカ人が百日本人……」

「そう、そんな風に」

「アメリカ人ひとりと日本人百人が同じ?」

 僕の頭のなかで天秤秤に乗った人々の姿が思い浮かんだ。 

「そうか、360人いた日本人が百人ですむようになった……日本の力が大きくなってきたってこと?」

「まぁ、簡単にいえばそういうこっちゃな」

 しかし、それでもアメリカ人ひとりに対して日本人百人が立ち向かわないといけないってことか。なんと弱い日本人。

「もっと昔はな、日本に円というお金が生まれた明治のはじめはな、1ドル1円だったんだぞ」

 アメリカ人ひとりに日本人ひとり……対等だったのに、だんだん日本人が弱くなって来たんだな。ようし。僕、頑張る。

「おいおい、どこに行く?」

「うん、身体を鍛えて強くなる。1アメリカ人が1日本人を目指すよ僕。それに、円安って、これからも円が安くなって価値がなくなってしまう前に、持ってるお金を使ってしまわねば!」

「おーい、ちょ、ちょっと待ちなされ。ちょ、ちょ、ちょーぉーっと」 

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第五百七十一話_short ネットで売っちゃえば? [comedy(笑噺)]

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 ネットオークションというものは知っていた。実際何回か入札して欲しいものを手に入れたことはある。だが、自分でなにかを売ろうなんて考えたこともなかった。

 ところが最近知ったのだが、世の中にはネットオークションでお金儲けをしている人がたくさんいるらしい。というよりも、私がゴミだと思っているようなものを求めている人がいるというのだ。

 着なくなった服や使わない引き出物、それどころか壊れた家電品やその部品、ブランド品を買った時の紙袋、読み終わった漫画雑誌ですら買う人がいるという。

 私は早速家の中に転がっている不用品をかき集めてネットオークションに出品してみた。

 イベントで貰ったバッグはすぐに売れた。履けなくなったブーツもすぐに売れた。

 面白くなった私はさらに家の中の不用品を次々と出品した。

 

 数ヶ月後。

 家の中は随分すっきりした。

 さらに一月後。

 私はすっかりガランと片付いたリビングの真ん中に座り込んで急に我にかえった。

 かつてはお気に入りだったソファーも、古いステレオセットも、大型テレビもなくなっていた。考えてみたらそれらは私にとって不用品に思えたのだ。

 そういえば他にも粗大ゴミのように思っていたものがあった。

「ねえ、あなた?」

 夫はもう、この家にはいないのだった。 

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第五百七十話_short ちゅうか帰国 [comedy(笑噺)]

 マンションの自転車置き場がなんとなくすっきりしていて停めやすいと思ったら、隣にあるはずの自転車がない。ここは確か、同じマンションに住んでいる中国人の自転車が置いてある場所だ。以前、一台分の場所に二台も置かれていて、私のスペースが狭くなっているので文句を言ったらもめたことがある。

「なんで? これは夫の自転車ヨ。私の場所に夫婦で置いてナニわるいか?」

 中国人の奥さんはそう主張するのだ。

「でも、ここは一台分の場所ですよ」

 そう言い返したのだが、ちゃんと中に入っているアルと言って睨みつけるのだ。中国人の考え方はよくわからない。

 そんないざこざがあってから、中国人の奥さんは私を敵視しているらしく、棟内であっても挨拶をしてくれなくなった。あんな余計なことを言わなければよかった。

 ちょうど自転車置き場にやってきた同じマンションの奥さんが私を見つけて声をかけてきた。

「こんにちは。あら、お隣の自転車の方、しばらく空いてるわね。なんか、中国の方に帰ってるそうですよ」

「そうなんですか。じゃあ、しばらくは帰ってこられないのでしょうかねえ」

 言いながら私はどこかほっとしていた。ゆったりと自転車を停められる。

 私は部屋に戻るエレベーターの中で違和感を感じていた。

 しばらく自転車がない、中国に戻っているから。でも……じゃああの中国の奥さんは、自転車に乗って中国に戻ったってこと?

 中国人ならありそうな話だけど。

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第五百六十三話_short モテ男 [comedy(笑噺)]

 何が草食男子だ。そんな女みたいな男が増えてるっていうけどよ、日本ももうおしめえじゃあないのかい? 他所の国ではよ、もっとこう、男らしい男が流行ってるっちゅうじゃねえか。ええ? ほらよ、なんつったかな。俺も飲み屋で誰かが言ってるのを聞いただけだからよ、詳しくは知らねえけどよ。

 筋肉もりもりでよ、格子柄の俺がよく来てたようなシャツを着てよ、無精髭なんてほれ、この俺みてえに生やしてよ。山男っちゅうか、いま山から出てきましたみてえな……うーんと、なんちゅうたか、そう、ラン、ラン、ランバダ……ランバートセ、セ、セクスィー……え? なに。ああ、そう、よく言ってくれた、そのランバーセクシャルっちゅうやつ、パツキン姉ちゃんにモテとるっちゅうじゃねえか。

 あれ、ほんまか? よぅ考えたらよ、そのランバなんとかっちゅうの、俺らのことちゃうか思うんよ。

 ほら、俺見てみ? 格子柄のシャツ、この筋肉、無精髭、山出しの男にちげえねえわ。な、とうとうおいらの時代が来たっちゅうことやな。

 ちゅうことでやな、これからみんなでアメリカ行こうやないか。嫁探しによ。早いとこ行っとかな、また草食男子の逆襲あるかもわからんしな。俺ら今まで汗臭いの汚らしいのとかさんざん言われてきて未だに一人もんや。な、すぐ行こう、パツキンやで! すぐ行こ、ほれ行こ。

 女とは縁遠かった山男たちの酒席は、久々に女の話で盛り上がっていく。

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