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第四百九十二話_short 戦利品 [idea (着想)]

 動物って、食べることをとても楽しみにしているんだって。だから躾や訓練のときに餌を使うと上手くいく。うちのペットなんて餌の準備をはじめるやいなや足元にじゃれついてきて、まだかまだかと催促し、器を食事の場所に持っていくその間もうれしそうについてくる。

 我々だって生き物である限りは同じだ。日中の仕事の間は真剣な表情でカリカリしながら作業を進めている。

「おいっ! 気をつけろっ。油断してると逆にやられてしまうぞ!」

「何言ってるんだ、そんなことは百も承知だ! そっちこそ気をつけろよ、奴らは俺たちと同じくらいに賢いってことを忘れるな!」

 こんな風に喧嘩腰になるほど必死で仕事をしていると、ときにはとても険悪なムードになったりもする。

 それでも手に入れた獲物を集めて仕事終りの宴会になるとみんなに笑顔が戻ってとても幸せなひとときに一変する。

 コンロに火を入れてフライパンに油を注ぐ。熱したフライパンの中に本日の獲物……奴らの巣から奪い取って来た子や親をそのまま放りこむと間もなく香ばしい香りに包まれる。奴らは素揚げでも美味い。

 この食事の愉しみのために、俺たちはあの危険な仕事を請け負っているようなものだ。 

 俺たちの仕事? 人間狩りさ……

 うそうそ。スズメバチバスターだ。 

                      了

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第二百七十八話_short 手づくり戒名 [idea (着想)]

 生きているうちに自分で戒名考えるのが流行っているらしい。確かに、坊主に頼んだら何十万もかかるわけだし。

 酒の席でそんな話になって、試しに俺の戒名をみんなで考えてくれるという話になった。

「なんか型みたいなのがあるなぁ、○○院とか、なんとか居士とか」

「ほんとうは、宗派だとか、伝授される名とか、いろいろあるらしいが、そのへんはまぁ適当に・・・・・・ワシら坊主と違うんだから」

 そうだそうだとわいわい言っているうちに、一人がム内容ポケットからボールペンを抜き取ってカウンターにあった紙ナプキンに一行書いて見せた。

「こんなん、どうお?」

 快楽亭喇叭飲兵衛

「なんだこれは?」

「漫才師の名前じゃぁあるまいし」

「アホかお前」

 みんなでボロカス言っていると、実家が寺のくせに生臭坊主にすらならなかった奴が手帳を引き破った紙に文字を書きはじめた。

「お前、酒は好きだから『酔』と書いておこか。それに、怒ったら恐いから『恐』。でこれを院号にしといて」

「院号って?」

「まぁ、そういう決まりのもんやな」

 坊主の息子が続ける。

「それから名前の一文字を入れて、あ、それにお前スペイン料理がすきなんやったな。ほんならそのスペインを漢字で書くとして『西』……これを戒名にして最後に位号……これでどうや?」

 酔恐院眞西晴々居士

「おおーなんとなくそれらしくなった」

「そやろ? これにしとき」

 メモを手にとってみるが、なんとなくぴんとこない。

「ふーん、形にはなっているけど、これ、俺かなぁ?」

「それにこの晴々って?」

「よぉわからんなあ」

「そんなこと言うなら、お前、自分のことだろ? なんかヒントをくれよ」

「ヒントをってどういう?」

「そうだなぁ、お前が好きなものとか、目指しているモノとか、そんなことか」

 言われて考えながら俺は、「ワールドワイド」「フェア」「インサイト」「ドリーム」等と思いつくままに口にしたのだが・・・・・・。

「カタカナばかりだな」

「うーむ」

 漫才師みたいなのを書いた奴がまた何か書きはじめた。

 世界平和人類兄弟夢実現公司

「だからさ、笹川一家じゃあないんだから。それに中国人でもないし……その公司ってなんだ? え?」

 しかし俺は言った。

「でも、なんとなく俺が言った言葉も解釈されてるみたいだし、近づいてきてるんじゃないのかなぁ?」

 俺は少し考えてて鞄から取り出した手帳に何行か書いては線で消した。何回か消しては書いているのをみなが覗きこんだときには、一行に絞り込まれていた。

 想世院眞酔快楽居士

                                  了
 

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第百五十話_short 嫌いな奴ら [idea (着想)]

 どういうものか、歳を重ねるごとに周りの人間の中に嫌な奴が増えてきている。

 若い頃は誰とでも仲良くしていて嫌いな人間など一人もいなかったように思うのだが、このところなにかにつけて嫌がらせをされたり、気に入らない言動を目の当たりにしたり、そういうことが一度でもあるとその人間のことが嫌で嫌で仕方がなくなるのだ。

 若い頃には柔軟だった私の頭脳がそうでもなくなったということなのかもしれないけれども、世の中がすさんできているからではないかなとも思うのだ。

 昔は仲のよかった友人も今では敵だ。あいつも、あいつも、みんな嫌な奴になり果ててしまった。もう誰も信じられないし、この苦しみを分かち合える友もいない。ああ、なんて世の中になってしまったんだ……。

 

「本当に困ったものだわ。もう少し周りの声に耳を傾けてもいいものなのにねぇ」

「ほんと、どうしようもないわね、あの爺さんは。あんなだから町内の嫌われ者って呼ばれてるのよね」

                          了

第百十七話_short ダイエット策 [idea (着想)]

 中年と呼ばれる年齢になって、下腹や二の腕の肉というか脂肪がとれなくなってしまった。若い頃は太ったことなどないのに、いまは食べてもいないのに肉がついていく。

 新陳代謝が悪くなっているから。

 そうだ、これは怠惰のせいではない。年齢のせいなのだ。それにしても去年来ていた服が着れないとか、見栄えが悪いとか、なんとかしなければと思って私なりにいろんなことを試してみた。

 炭水化物を減らす。

 バナナダイエット。

 青み魚で太らない体質を作る。

 防風通聖散とかいう漢方薬を飲む。

 お風呂の中で下腹を揉みだす。

 ロングブレスダイエットとかいう呼吸法をやってみる。

 終いにはできるだけ食べないようにするという無謀なことまで。

 スポーツだけは苦手なのでしなかった。歩く以外は。

 しかし、こんなことでそう簡単に痩せる身体ではないらしい。当初二キロほどは減ったけれども、それっきり、体重も腹周りもなんの変化も見せなかったのだ。

 ところがある日を境に急激に体重が落ちはじめた。なんということだ。今頃効果が出てきたのだろうか。

 そのうち胸のむかつきや頻繁に出るげっぷが出るようになったことを夫に言うと、「すぐに検査した方がいい」と言うので、翌週病院で検査を受けた。

「胃に腫瘍ができていますね。まだ初期の……」

 私は驚いた。そうか。その手があったんだ。なにをしても痩せることができなかったのに。

「先生、治せますか?」

「もちろん、早期発見できましたね」

「でも先生、しばらくこのまま温存できませんかねぇ?」

 もちろん、治さなければならない。けれどもそんなことよりも目標の十キロという減量がもう目の前であることに私は大きな喜びを感じていた。これを機会にもうお腹にお肉を溜めたりしない、そう決心したのだった。

                         了


第九十一話_short お咎めのない体罰 [idea (着想)]

 あの悲しい事件以来、生徒に対する教師の体罰が全国的に問題になり、教師は生徒に一切暴力的な罰を与えてはならないという条例までもが制定された。

 こうなると、教える立場としては非常にやりにくいこととなり、生徒に対して示しがつかないという事態までも発生したが、それでも自殺者まで出してしまったのだから仕方のないことだった。

 ところが、ある町の教師が思いついたアイデアが、事態を一転させた。

「へへん。どうせ、先公のやつ、俺たちに手出しできねえんだからよ、怖くもなんともないねえ」

 学校一の悪たれ生徒がほざいた。すると担任の教師である綾小路は不敵な笑みを見せながら言い放った。

「おい、山崎! お前には罰を与えるから、職員室に来い!」

 放課後になって悪たれ生徒が職員室にやってきた。

「なんだよ先公。俺に体罰なんか与えたら、理事長である親父が黙っちゃあいないぜ」

 綾小路は生徒を椅子に腰かけさせ、黙って鞄の中から皮手袋を取り出して両手にはめた。

「な、なにするつもりなんだよう、先公よう」

「ふふふ。お仕置きだ。しかし、これは暴力ではない。覚悟しろ」

 椅子に座った生徒の後ろに立った綾小路、腰をかがめて生徒の背中から回した手を脇腹に持っていった。

「こちょこちょこちょこちょ! こちょこちょこちょこちょ!」

「ああーっ! 先生、止めてぇ! 俺、そこ弱いんだよう! ああーっ! や、止めてくれー!」

「こちょこちょこちょこちょ! こちょこちょこちょこちょ! こちょこちょこちょのこちょ!…………」

             了

 

 

 


第七十話_short カウントダウン [idea (着想)]

 カウントダウンがはじまった。

 ステージ上のバンドが演奏を止めて叫び声を上げる。グラスを手に歓談していたみんなが注目する。

 いよいよだ。

「10、9、8……」

 MCの声に併せてみんなも声を合わせる。

「3、2、1……」

 全員の声がそろって最後の「0」を叫ぶのと時計のが真夜中の零時を指すのはほとんど同時で、その瞬間、世界中に光があふれて、人々は新しく変貌した世界へと飲み込まれていった……。

 カウントダウンに参加する度に、こんなドラマティックな事が起りそうな気がするのだけれども、今年もまたただ日付が変わって新たな年に変わっただけだった。

                                       了


第六十三話_short ひとりのイブ [idea (着想)]

 今夜はクリスマスイブ。

 私は今夜もたったひとりの夜を過ごさなければならない。

「マスター……イブだというのに私はどうしてひとりぼっちなの?」

 ひとり空しく立ち寄った行きつけのバーでマスターにこぼした。マスターは答える。

「ひとイブかぁ……しかし、一年三百六十五日ひとりなのに、どうして今夜だけ嘆くの?」

 ……たしかに。今日だけ恋人がいたら、むしろおかしい。

                                   了


第五十二話_short 停電 [idea (着想)]

 道が人でごった返している。

 普段は混むことなどない静かな道なのだが、年末になると街路樹がイルミネーションで飾られ、美しい光の饗宴を一目見ようという人々が集まり、まるでお祭りのように賑わうのだ。

 男は迷惑な話だなと思いながらいつもの帰り道を歩いている。

 と、突然すべての照明が光を失って通りに暗闇が訪れた。驚き、その場に固まって立ち尽くす人々。

 停電か? なにか事件か? 

 不安に包まれる人々の間をすり抜けて、男は通い慣れた真っ暗な道をつまづくこともなく歩き続ける。

 どうなってる? 早く明りをつけてくれ!

「こんなに電気の無駄遣いをするからだ」

 呟きながら歩く男の白い杖がざわめき声をすいすいすり抜けていく。

                                   了


第四十八話_short 憑依 [idea (着想)]

 人気ゲームソフトが並んでいる。ものすごく欲しいのだけれども、僕のお小遣いではとても買えない。買えないけれども見ているだけでもうれしいからさっきからずーっと見たりケースを手に取ったりして、売り場から離れることができないでいる。

「ああ、欲しいなぁ」

 するとどこかで声がした。

「盗んでしまえ」

 誰? いけないよ、そんなこと。

「こっそりポケットに入れてしまえ!」

 それって万引きじゃない。だめだよ、そんな悪いこと。

 なにかが僕の頭の中に入り込んでくる。

 ぐっ! 何? 誰?

 僕はあたりを見回して手に持っていたゲームソフトをポケットの中に忍び込ませる。

 止めてよ! 捕まっちゃうよ!

 ケケッ。大丈夫だよ。万引きをしてるのはお前じゃない。お前に憑依した俺がやってるんだ。捕まったとしても、ぜーんぶ俺のせいなのさ、お前じゃない。

 僕はそのまま黙って店の外に出る。

                                   了


第四十話_short 洗脳 [idea (着想)]

 TTPはどうかって? 反対に決まってるでしょ? いま以上に農家を苦しめてどうするの。

 オスプレイですか? あんな危険なもの、どうして日本に持ち込むの。

 消費税反対だなんて、どうかしてるよ。国の借金は国民みんなの借金だよ。それを払うためには今すぐにでも10%でも20%でもするべきだよ。

 順造はよく人から意見を求められる。いつも明快な意見を力強く述べるからだ。

「ちょっと、順ちゃん知ってる?」

 隣家で寝たきりの梅子を見舞うと待ちかねたように喋り出した。この人は動けない分、雛が一日テレビをよく見ていて、順造唯一の情報源となっている。何を? と返事をする前に喋りはじめた。梅子はお喋り大好きなのだ。

「ほらあの、日本版NSCとか言うやつだけど。あんなもの認めちゃダメよね。あんなの決まっちゃったら日本はいきなり右翼化して、軍事国家になっちゃうわ。言論統制まではじまったら、また昔のように……」

 梅子は本当に物知りなので、順造が知らないことまでよく知っているのだ。本当に助かる。

「順さん、あのNSCとかいうのはどうなの?」

 老人会でまた意見を求められた。順造は自信満々に答える。

「ああ、あんなもの認めちゃぁ絶対にだめだよ。日本が右翼化してしまうし……」

                                   了


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