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第七百二十七話_short お受験 [science Fiction(空想)]

 そういえばわしが若かったころには「受験戦争」という言葉があったように記憶している。あれはたしか学校に入るための試験が大変で、まるで戦争みたいに皆が必死になって勉強していたことを揶揄して言っていたのだと思う。

 あれからずいぶんな年月が過ぎて、わしももはや残りの人生はいかほどかといういまになって、またこの忌まわしいものが我がことになるとはよもや思うておらなんだ。

 なんでこの歳になって試験を受けねばならないのだ。生涯勉強とはいうが、歳をとってからモノを覚えたり考えたりするのは結構大変なんじゃ。わしは日ごろから文章を書いたりしておるだけに、頭の回転はさほどは鈍っていまいと思うとったのじゃが、いざテキストを手にしてみると、なんとまあ最近の言葉の難しいこと。知らない言葉、それも英文字やカタカナ言葉ばかりでもう目がくらんでしまうのじゃ。

 テキストの名前は「ニンゲンバンザイ」。なんなのだこの名前はと思うが、読んでみるとなかなか大事なことが書かれているようにも思える。要は人として大切なことを、もう一度おさらいしておこうということなんだろうな。

 考えてみれば昨今、世は乱れ、悪人が増え、またテロリズムだのファシズムだの、恐ろしげな言葉も増えてきて、なんとなく世知辛さが目立ってきておる。この国でも戦争法案がどうしただの、敵が攻めてきたときにどうするかだのと、いささかキナ臭い動きが起きておるようじゃ。そこに来てこの受験制度の導入なんじゃな。

 昨日、わしもついに受験を受けることになった。こんな常識問題、なんてことはないと高をくくってあの難しげなテキストも適当にしか読んでおらなんだ。そのせいかもしれん、試験は案外と知らないことだらけで、すべて書き終える前に時間切れとなった。じゃがまあ、こんな年寄り、いまさら合格もへったくれもあるまいに。

 そう言えばさっき届いたこの封書は……結果通知と書いてある。さすがにいまのシステムは早い対応じゃな。なんだかドキドキするわい。

 封書を開けて見ると、そこには「不合格」の文字が。

 いくつになっても嫌な言葉じゃ。なになに……

「既にご存じのように、世界は人口増加に伴い深刻な食糧問題が目前に迫っております。

そのようなことを背景に、このたび”人間の掟”が実施されたわけですが、 

これに不合格となられたあなたは、生存の権利を失われました。

 一週間後に速やかに寿命を終えることが決定いたしましたので、ここに通知いたします。詳細は追って」 

 ドキドキしていたわしの心臓は通告のストレスに耐えかねて静かに動きを止めた。 

合格.jpg 

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第七百二十五話_short 不気味な生物 [science Fiction(空想)]

 海岸に不気味な生物の死骸が大量に打ち上げられた。最初に発見したのは地元の漁師だった。

 砂浜に上がった死骸の多くは繊維質の皮を持っていてそれらは波に洗われてぼろぼろンになってしまっているのだが、その内側からむき出しになったピンクヤンベージュの内皮というか真皮の部分を見ると、とてもやわらかそうでいかにもよわよわしい生き物であるのだろうと思われた。外皮はそうした弱点を守るために存在する貝殻のようなものであると思われた。

「なんだべ、これは、気色悪い」

 発見した漁師は近くに落ちていた棒きれでつんつんつついてみたが、どれもぐったりしていて動く気配もなかった。

「これはなんちゅう生き物だべ。こんなものがこの世に生きているなんて、おらぁ知らなかったべ」

 村に戻った漁師は村長に報告し、村長はすぐさま当局と連絡をとった。

 まもなく当局が研究者や報道陣を伴って現場に現れた。最初は全員がおっかなびっくり棒でつついたり写真を撮ったりしていたが、さすがに研究者の一人はモノを知っているもので、その生物が何者かを思い出した。

「せんせ、これはいったい?」

「そうよの、ワシも実物は初めてみるのじゃが、遠い昔に読んだ書物の中にこういうのが図柄で乗っていたのをいま思い出したぞ。これはな、大昔、わしらの祖先よりも昔からこの世界に棲んでいたと書いてあった。わしらと非常によく似た遺伝子を持っておるとも書いてあったな」

「で、これは生き物なんですか? それともなんか怪物のような?」

「いやいや、怪物じゃありゃせんぞ。過去の生き物じゃな。しかしまだこんなものが生息していたとはな」

「せんせ、じゃあもうこの世にいないはずの生き物が今頃この浜にあがったと?」

「そうじゃな。とっくに絶滅したと思われていたが、どこかの島にでも隠れておったのやもしれんな」

「で、せんせ、これはなんていう生き物で?」

「そうじゃな、これはわしらサルパが進化する前にこの世界を支配しておった、ニンゲンちゅう生き物だと思うぞ」

「ニンゲン……なんとまあ無様な姿の生き物ですなぁ!」

「こんなものがまだ生きておるなんて、この世には不思議なことがまだまだあるものじゃ」 

サルパ.jpg

(2015年7月、米国東海岸に打ち上げられた不気味な生物サルパ) 

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第六百九十三話_short 青い果実 [science Fiction(空想)]

 空を切り裂くように一筋の雲が走った。

「あ。ひこうき雲!」

 子供が叫んだ。現れたひこうき雲はみるみる幅を広げていき、青い空が失われていった。

 

「おお、これは瑞々しくて美味そうだ」

 青い果実に入れた一筋の切り目から、器用に表皮を剥きながらそいつは言った。

「こういうのって、当り外れがあるものな」 

青い果実.jpg 

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第六百九十一話_short 最後の花の種 [science Fiction(空想)]

 かつてこの世界には花というものがあった。

 それは人々の心を癒し、世界に平和をもたらす存在であったという。たとえばこの世の美しいものは花にたとえられ、同時に純朴なものや頼りなげな存在も花に見たてられもしたというからそのような存在であったであろう。

 花そのものがなぜこの世に生まれたのか、そしてまたなぜなくなってしまったのか、その理由は定かではない。とにかく「美」の象徴とされるものとしてこの世に花があったということだ。

 地上に埋もれた過去を探し、歴史を知ることによって未来を予測するという仕事に就いている我々は、遺跡や化石を探る傍らで常にどこかにこの失われた花というものが奇跡的に残っていないだろうかと探し続けてきたのだが、ある洞窟の中で、おそらくはこれがこの世に残っている最後の花の種であろうものをついに発見した。

 誰が、なぜ、どういう理由でこんなものを残すことができたのかは、これからの調査を待つしかないのだが、種は小さな容器の中に封じ込められていて、命を吹き返すのを今か今かと待っているようだった。

 我々はこの発見を大いに喜んだわけだが、容器に記された言葉がその喜びを半分にしてしまった。

「醜い花の種」

 容器には今にも消えそうなほど変色してしまったインクでそう書かれた紙が貼られていた。さらにその下には読みにくい小さな文字で説明書きがあった。 

「美とは程遠い醜い姿を見せる頃には、死臭にも似た醜悪な臭いを放つ。しかも繁殖力は強く、こんなものがこの世にはびこればこの世は地獄と化するだろう。よって我々は最後のこの花の種をここに封印する。植えることなかれ」 

 醜いといえども花には違いないだろう。

 いや、醜いのならそれは花ではないのではないか。

 それでも私は花というものを見てみたい。

 いや、そんな花と言えないような花など見たくもないし、この世を地獄にするなんて恐ろしすぎる。 

 本物の花を見たことのない我々は議論を重ねたが、結論などでるはずもない。

 そもそも、美の象徴を見たことのない我々にとって、いったいどういうものが美しい花なのか、反対に醜い花とはどういうものなのか、それすらわからないのだ。

スマトラオオコンニャク.jpg 

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第六百八十三話_short 穴 [science Fiction(空想)]

 Tシャツの胸元に小さな穴を見つけた。お気に入りのTシャツに穴があいてしまったと知ることは思いのほかショックだった。このままほおっておくと穴はもっと大きくなってしまうかもしれない。今のうちに繕っておいた方がいい。二ミリくらいの穴だから、ちょっと縫うだけで大丈夫だろうと思って引き出しの奥から小さな裁縫セットを取り出し、苦労して小さな針の穴に白い糸を通してシャツの裏側から繕った。思った通り、三針で穴はふさがった。が、なにしろ慣れない縫物であり、小さな穴はふさがったが少しひきつった感じの粒がTシャツの表面に生まれたような感じになってしまった。

 こんな簡単な繕い、母に頼んだらきっと上手に直してくれただろうな。そう思ったが、その母はもうこの世にいないのだから仕方がない。

 考えてみたらこのTシャツは高校生の頃に兄からもらった外国土産で、胸元にはその当時売り出し中だった海外アーティストが描いた奇妙な人物像が描かれていた。奇妙なというのは、非常に単純化された姿ではあるが、それが人間なのか動物なのか定かではないというキャラクターのものなのだ。あれから何年かして兄は事故で亡くなり、いわばこのTシャツは兄の片見のようなものになった。

 お気に入りの衣類は、できれば大事に取っておきたい。だけど箪笥に入れておくと忘れ去られてしまい、それは無いことと同じことになってしまう。だからやはりしまっておくよりはときどき着て楽しんだほうがいい。

 ところがお気に入りだけに、着だすといつもそればかり選んでしまうので傷みやすくなる。難しいところだ。

 いずれにしても大事に着ていたTシャツだけにとても残念な気分だが、それでも穴をふさいだことで少し気持ちがおさまり、しばらくすると完全に忘れてしまっていた。

 何日か、あるいは何週間かして、再びそのTシャツを着ようとして、胸のところに小さな穴を見つけてしまった。

 あれ? これはこないだ修繕したように思うのだが。どうやら、直した箇所がほつれてしまって穴にもどってしまったようだ。下手な繕いだからこうなるんだな。やっぱり上手い人に頼んだ方がいいのかな。

 思いながら再び針と糸を取り出して縫おうとして驚いた。

 やや! これはこないだの穴と違う。その近くには別に縫ってできた粒があったからだ。二つ目の穴? 調べていると近くにまた別に三つ目の穴を見つけてしまった。

 なんなのだ、これは。もう生地が悪くなってしまっているのだろうか? 恐る恐る布を引っ張ったりもんだりしてみたが、別に異常はない。虫食いだろうか。いずれにしてもこれは大変だ。二つの穴を注意深く縫って、他にはもうないか調べた。幸いそのほかには穴は開いていないようだった。

 ひと月後。お気に入りのTシャツの胸元にはたくさんのひきつれを伴う粒が生まれていた。その上、より大きい穴が開いている。もはや繕うのは限界なのだろうか? ひきつれだらけのTシャツは、もはや元のすっきりしたシンプルなものとは違うデザインが施されたように見えた。

 なぜこのようなことになってしまうのだろう。穴の開いたTシャツをちょうど着ているかのように身体に充てて、胸のあたりを撫でてみた。となんとなく違和感を感じ、どきりとした。着ている衣服の前をはだけて首を傾げ、自分の胸のTシャツの穴のあたりに目をやった。

 なんなのだこれは。

 胸のあたり、ちょうど左乳首の下あたりに1センチほどの穴が開いているではないか。さらに首を傾けて覗き込もうとするがさすがに穴の中までは見えない。指でなぞってみると、指先以上は入らないが、確かに穴が開いているようだった。

 どうしたらいいんだろう。幸い痛みはないけれども。自分で繕うことができるだろうか。

 また思った。母が生きていれば、きっと上手に繕ってくれたに違いないのに。

 私はいつまでも途方に暮れてTシャツを胸元に充てたまま座り込んでいた。 

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第六百十八話_short 差別はやめよう [science Fiction(空想)]

「また、校内で差別行動があったようです。みなさん、お友達を理由もなく差別するのはいけないことですよ」

 小学教師は生徒たちに常々からそのように指導しているのにもかかわらず、相変わらず生徒たちによる差別発言や差別行動は後をたたない。

「でも先生、理由はありますけど」

「たとえ理由があっても、差別はいけないことですよ」

 教師の言葉に生徒のほとんどが首を傾げた。

「弱い者、数の少ない者がのけものにされて差別されるなんて、困ったことです。お友達なんだから」 

「ええーっ? 先生、ポールは友達じゃないよぅ」

「トム、そんなこと言うモノじゃありません。同じ学校に通っているのだから、立派な友達です! あなたたちがのけものにしているだけでしょう。ちゃんと仲間に入れてあげなきゃ」

 生徒たちはみんな首を横に振った。

「ムリムリ。だって、ポールは僕らの仲間になりたくないって言ってるよ。だから僕らは仲間にしてやらないって決めたんだ」

 教師はほとほと困った顔になった。最近、こういうことが頻繁に起こっているようなのだ。

「何を言っているの。ポールだって本当は仲間になりたいはずよ。きっと恥ずかしいんじゃないかな? もしそうなら、無理やりにでも仲間にしてあげるべきよ」

 教師は引き出しの中に収めているケースから宇宙虫を取り出した。

「ほら、これを持って言ってポールの耳に入れてあげなさい。厭がったら無理にでもよ。そうすれば私たちと同じになれるんだから。いつまでも人間のままでいるなんて、ポールがかわいそうじゃないの!」 

 生徒の一人がもぞもぞ蠢いている宇宙虫を受け取って大事そうに両掌に収めた。

「うん、じゃあ僕らいまからポールのところに行ってくるよ。みんな、手伝ってくれるね?」 

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第五百七十七話_short 30秒のメイクマシン [science Fiction(空想)]

 たった三十秒でフルメイク。マシンに顔をいれるだけ!

 ネットに流れてきたニュースに驚いたものだ。いったいどういうこと? 普通のメイクなら三十分はかかるのに、三分でやれといわれてもとても無理だと思うのに、三十秒? どうすればそんなことができるの? そう思ったのだが、記事を読んでなるほどと思った。

 つまり、プリント技術なのだ。スマホのアプリにいくつものメイクサンプルがはいっていて、お好みにメイクを選んでメイクマシンに転送する。マシンに顔を入れると、転送したデータ通りのメイクが顔面にプリントされるという仕組みだった。

 だがあの時点ではまだ実用化はされていず、予告みたいなニュースだった。

 いま考えればなんと初歩的な技術だと思うけれども、あの頃はすごいと思ったものだ。

 あれは十年前のこと。マシンはどんどん進化して、いまではマシンでメイクしようなんていう人はいないだろう。なんせ昨今のマシンは、顔を突っ込むだけで分子構造が変えられて、顔どころか骨格まで変えてしまえるのだから。えらい時代になったものだ。

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第五百六十六話_short マザー [science Fiction(空想)]

 僕には母がいない。ぼくが生まれた時からこの世に母はいなかったのだ。

 だから、物ごころがついて「母」という言葉を知った時には少なからず衝撃を覚えた。母親、お母さん、ママ、母上……母っていったいどういう人なんだろう? そういえば学校の友達にはみんなやさしくて美しい大人の女の人が身近にいるようなのだ。でも僕の家にはそういう大人の女の人がいない。

 お父さんに聞いてみたことがある。

「ねえ、どうして僕にはお母さんがいないの?」

 すると父は決まって困ったような顔をしながら言うのだ。

「何故そんなことを聞くのだ? お前にはわしがいるじゃないか。そんなことはもう聞くものじゃないぞ」

 父からそう言われてしまうと、しばらくはもう母のことを口にできなくなってしまう。

 しかし年に一度だけ、どうしても母のことを思い出してしまう。そう、今日のような母の日というものがあるからだ。

 学校のみんなはカーネーションっていう花とか、なにか気のきいたものとかをお母さんにプレゼントする日らしい。みんながそうするから僕もカーネーションを一輪買ってみたのだけれども、僕には母なんていないからプレゼントできない。しかたがないから買ったカーネーションは父にプレゼントした。父は少し悲しそうに、そして恥ずかしそうに受け取ってくれた。 

 僕が生まれて何年かしてから妹ができた。だけど、その妹にもやはり母はいない。母親がいないのにどうして僕とか妹が生まれたんだ? きっとみんなそう思っているにちがいない。でも事実なんだから仕方がない。

 カーネーションをあげるときに、僕はやっぱり訊いてしまった。

「お父さん、本当はこの花はお母さんにあげるものなんでしょう?」

 すると父はやはり困ったような顔をして言った。

「いいかい、お前にはわしがいるんだ。それ以上の何が欲しいと言うのだ? もう、そんなことを聞くんじゃあない。わかったかい、亜斗夢。妹の宇蘭にも同じことをいってるんじゃがな。もうそろそろ理解しておくれ」

 世間からはお茶の油博士と呼ばれている父はそう言って僕を抱きしめるのだった。

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第五百五十話_short ドローンの脅威 [science Fiction(空想)]

 首相官邸でドローンが墜落しているのが発見された。

 ドローンとは複数のプロペラで飛行する小型無人機のことで、近年になって世界中で話題になっている玩具のような飛行機器だ。落下していたものは両手で抱えるほどの大きさで、djiファントムと呼ばれているものだが、世間を震撼させているのはその機体に放射性セシウムが入った容器が取り付けられていたことだ。いったい誰が何の目的でこんなことを?

 報告を受けた阿媚首相は笑いかけながら言った。

「まあ、大事に至らなかったわけですし、いいじゃあないですか。でも一応、いろいろ調べてもらえますか?」

 相手は玩具のような代物であるし、あまり騒ぎ過ぎるのもどうかと考えているのだろうか、さほど大きな問題とは思っていないようだった。

「しかし首相、こんなものとはいえ、自由に官邸内に入って来るなんて、これは大問題ではないのでしょうか?」

 首相はそれでも態度を変えずに答えた。

「そうですね。だから一応調べて欲しいわけなんですが、同時に今後の対策なども練っていただけますか?」

 そうなのだ、今後の対策、すなわち航空法や法律でドローンを取り締まる必要が緊急にあるということなのだ。それにしてもこれほど小さくてしかも無人機である飛行物をどのようにして取り締まることができるのだろうか? 噂ではさらに小さなドローンも生まれているというし。

「それにしても近頃、なんだか小さな虫が多くはないか?」

 確かに。建物の内外を問わず、あまり見たことのないような小さな虫がブンブン羽音を立てて飛んでいるのだ。まだ蚊が飛ぶ時期には少し早いと思うのだが。それに去年まではこんな虫は飛んでいなかったと思うし。

「首相、起きをつけた方がいいですよ。そろそろデング熱の時期でもあることですし……」

 秘書官はそう言いながら一匹の虫を手でたたき落とした。大理石の床に叩きつけられた虫はカシャッ! と金属的な音を立てたかと思うと、身体の中から極小の螺子や歯車を飛びださせた。 

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第五百四十九話_short クラスメイト [science Fiction(空想)]

 四年生くらいまでは普通にみんなと遊んでいた。

 クラスのみんなが変わったのは五年生になってクラス替えがあってからだったと思う。ちょうどその頃お父さんお母さんの転身があったからかも知れない。新しくクラスメイトになった子たちは誰ひとり僕に近寄ろうとしなかった。僕から友達になろうと近づいていくと、みんなわあと声をあげて逃げてしまうのだ。前の学年で同じクラスにいて友達だった子も何人かいるのだけれども、その子たちも僕を遠巻きに見ているだけなんだ。

 どうして? ねえ、友達だったでしょ?

 そう言うと彼らは黙ったままあからさまに嫌な顔をして離れていくのだ。

 僕、何かわるいことしたのかしら? そんなおぼえはないんだけどなぁ。

 実は先生さえも僕に近寄りたがらないみたい。それにこの前ついに職員室に呼び出されて言われた。

「ご両親とも相談しなければいけないんだけれど、君はやはり特別教室に移った方がいいと思うんだがな」

 特別教室というものがあるという噂は知っていた。でもそこは本当に人とは違う特別な子供ばかりが集められているんだって思っていた。僕なんて何も特別なことなんてないのに、どうして??

「みんな、君に噛みつかれるんじゃあないかと心配なんだよ」

 先生は言った。そういえばクラスメイトからも言われたことがある。

「お前、近寄んな。噛みつくんじゃないぞ!」

「そうだそうだ、噛まれると感染っちゃうぞ!」

 友達はそう言って逃げていったのだ。

 なんだよ。僕、噛みついたりしないし、病気じゃないぞ!

 そうは思ったものの、実は最近は家で出される生肉だけでは物足りなくなっている自分を感じはじめていて、ああ、もしかしてそういうことかと思わないでもなかった。

 お父さんが転身したのも、会社で誰かに噛まれたからだって言っていた。お母さんはかおいろがわるいわと言ってお化粧が濃くなってきてるし、髪の毛が抜けて困るって言ってた。僕自身もこないだ耳を触っていたらポロリと取れちゃってびっくりした。

 特別教室って噛みつく子たちのクラスなのかな? みんなと友達になれるんだったら、そっちに移った方がいいのかな?

 先生が言った。

「そんな暗い顔するな。君のような子はこれからもっと増えていくだろうから、友達だってすぐできるさ。それに、君らはもう死ぬこともないんだから、死ぬまで……いや、いつまででも好きなことをやって生きていける……あ、違うか、死んでいけるって言うべきなのかな? しかしえらい世の中になったものだ。ゾンビと共存する世界なんて……」

image.jpg[コピーライト]ティムバートン

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