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第七百七十二話_short 不正ログイン [news(時事ネタ)]

”不正ログインの疑いがあるため、オークションとショッピング機能を停止いたしました”

 突然プロバイダからメールが入った。

 なんてことだ、またか。少し前にはフェイスブックでも同じようなことがあった。誰かが私のIDを使ってログインし、勝手にメッセージを送信したのだ。どうすればそんなことができるのかわからないが、サイバー世界に長けた悪者が横行しているようなのだ。IDのパスワードを変更し、メッセージを発信したのは自分ではないことを皆に知らせ、迷惑がかかっていないか詫びを入れ、事態を収拾するのに大いに苦労したばかりなのだ。

 今度のはオークションやショッピングにもかかわるメインのプロバイダ関係だから事態はさらに深刻だ。パスワードを変えなきゃと思っているうちにメールサーバーにも入れなくなってしまい、どうにもこうにもできなくなってしまった。オークションサイトでは私の出品品を落札してくれた人もいるし、メールが見れないとなるとIDを復旧させるための連絡先を別に設定しなければならないし、大変困ったことになった。

 別のメールアドレスからプロバイダに問い合わせをしたが的確な情報も入手できず、四苦八苦しながらようやくメールを復旧させ、あとは他の機能を復帰させてもらうまで待つしかないところまで漕ぎつけることができた。おかげで会社ではほとんど仕事にならなかった。

 その日、身も心もくたくたになって帰宅すると家の中が暗い。

 なんだこりゃ? 出かけているのか? 薄暗がりの中、手探りでスイッチを探して電灯を点けると、リビングの真ん中に妻が茫然と突っ立っていた。

「な、なんだ? どうしたんだ、明かりもつけないで?」

 妻はゆっくりと私を見て言った。

「不正ログインのため、すべての機能を停止させました」

不正ログイン.jpg 

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第七百六十六話_short カミングアウト [news(時事ネタ)]

「最近さ、なんだかLGBTって話題になってるだろ?」

 唐突かと思ったけれども、それでも僕はさりげなく言ったつもりだった。LGBTとは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの略で昔からある言葉だけれども、カムアウトする人が増えてきたためか、急に脚光を浴びるようになった言葉だ。

「ん? そうなの?」

 俊夫はあまり興味なさそうにそう答えてから、残り半分くらいになったハンバーガーを左手に、今度はコーラのストローを口に充てた。

 大学に入ってから軽音楽サークルで知り合った俊夫とは妙に気が合う部分があって、サークルの仲間の中でもいちばん一緒にいる時間が長い男だ。

「ほら、いまじゃ二十人に一人はそうだっていうじゃない?」

「え?なにが?」

「だからさ、LGBTがだよ」

「ふーん。そんなもんかなぁ?」

「そうだよ、そんなもんらしい」

「いや、でも、もうちょっと多いんじゃないの? 俺はそう思うけどな」

「多い? 俊夫はそう思うの?」

「ああ、俺だって好きだもの、そのLGBTってやつ」

 以外だった。俊夫がLGBTを好きだなんて。なんだ、気にすることなかったんじゃあないのかと、僕は内心少しほっとした。

「好きだって、まさかその、俊夫もその……そういうの興味あんの?」

 僕が少ししどろもどろになって訊ねると、俊夫は怪訝そうに言った。

「興味あるって……興味っていうか、たまには食いたくなるよね。みんなそんな感じなんじゃないの?」

 食いたくなるって……まさか俊夫にその方面で遊んでいるとは知らなかった。

「食いたくなるって? もしかしてそういう知り合いとかいるわけ?」

「知り合い? 別に知り合いじゃなくっても、目の前にあったら美味そうだななんて思うんじゃあないの?」

 じゃ、もしかして僕のことも既にわかってたのか? 僕の心臓がバクバクしはじめた。この流れなら、本当のことを俊夫に言うことができそうだったけれども、俊夫があまりにも普通にLGBTのことを話すので、逆に気後れしてしまったのだ。 

「も、もしかして、ぼ、僕のことも?」

「え? お前がどうしたって? ああ、そうか、知らんよ、お前のことなんか。お前だって好きだからそんな話をしはじめたんだろうよ」

 僕が好きだって? 違う、好きでこうなったんじゃない。生まれつきなんだよ、何も好き好んでゲイになったわけじゃない。そう言おうとしたとき、ハンバーガーの最後のかけらを口に放り込んだ俊夫が立ちあがった。

「お前がそんな話をするからさ、急に食いたくなったよ。ちょっと買ってくる。BLTバーガー」

 俊夫はBLT、つまりベーコンレタストマトバーガーの話をしていたのだ。

LGBT.jpg 

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第七百十八話_short トトとフリオと公園で [news(時事ネタ)]

 事務所から五分くらいのところにある公園。ここは庭みたいなものでこの十数年、毎日のように通ってきた。その北東にあるコンクリートのベンチに、フリオは静かに腰掛けていた。膝の上には長い年月にわたって友であリ続けた愛犬のトトがいる。若い頃はこんなにじっとしていることはなかったし、フリオ自身もこうして黙ってベンチに座っていることもなかった。

「そうか、こいつがうちに迷い込んできたのはもう十四年も前か。ということはオレもまだ五十をちょっと過ぎたばかりだったのだな」

 いつも一緒にいるからお互いに歳のことなど考えたこともなかったが、こうして改まってみると実に長い年月が過ぎ去ってしまったことに気がつく。それがいいことなのかよくないことなのかそれはわからないが、自分自身では十四年経ってもなにひとつ変わっていないように思える。

 だが、膝の上の愛犬はあの走り回っていた頃の姿は見る影もなく、哀れにもやせ細ってふたまわりほども小さくなってしまった。トトは今年十九歳、微かに息はしているものの、いつ逝ってもおかしくないのだと確信している。

「太陽の光に当てたらすっかり元気になったって話を聞いたことがあるよ」

 近所の知り合いにそう言われたときは、そんな馬鹿な話はあるまい。なんかの病気ならそういうことがないとは言い切れないが、老衰で寿命が亡くなっている犬がいまさら太陽の光で生まれ変わるわけがない。そう思ったのだが、考えてみれば息子のような愛犬を陽の光に充てて悪いはずもあるまい。この公園にも長いこと来ていないし、と考え直してトトを抱き上げた。

 本当は専用ベッドの上で息絶え絶えになっているトトを動かすのはかわいそうかとも思えたが、いやいや、最後に大好きだった公園を見せてやるのもいいだろうと自分に言い聞かせた。

 トトは膝の上で静かに眠っている。ニ、三日前までは、ときおり目を覚まして「あん、あん」と吠えたのだが、昨日からその声も出なくなった。なにか訴えるように吠えようとするのだが、声が出ないのだ。

「今夜あたりじゃない?」

 事務所の女の子が言った。

 そうかもしれない。でもそうじゃないかもしれない。

 もう一週間ほど前から、トトの目から力が失われ、いよいよ今日じゃないかと毎日のように思ってきたが、ご飯も食べないのに生き続けている。生命力とはすごいものだなと感心もするが、一方では何も食べないというのは逝く準備をしているのだともわかっている。

「今日は私も事務所に泊まろうかな。朝までトトの傍にいたいから」

 事務所の別の女史がそう言ってくれた。でも、たぶん、今夜はまだ逝かないと思う。いや、まだ逝って欲しくないんだ。

 フリオ自身はとっくに覚悟を決めて、友人とお別れする心の準備はできているのだが、それでもたった一日でもこの膝の上のぬくもりを失いたくないという感情に支配されている。 

 膝の上でゆっくりと息をしている生き物が、自分の一部であるという思いがふと浮かびあがった。

 こいつの息が止まったら、オレの心臓も止まってしまうかもしれない。急にそんな風に思えてきたのだ。まぁ、それも悪くないか。まだまだやり残したことはあるのだけれども、そういうのはキリがないしな。一通りのことは既にやってしまったわけだし。ここでこいつと一緒にあの世に行くのも悪い選択肢ではないのかもな。

 常にポジティブにしか考えないフリオだったが、トトと一緒に逝くことは決してネガティブなことではないような気がしてきたのだ。

 公園の北東にあるコンクリートのベンチに、初老の男が座っている。午後の日差しの中で気持ちよさそうだなと、通りかかる人々は思った。よく見ると膝の上にはグレーの動物……犬らしきものがのっかっている。男も犬もただ黙って座っている。もう二時間余りもそうしているのではないか。風が吹いて、男の傍にある桜の木が揺れたが、男は微動だにしない。座って、頭を垂れて、まるで犬を全身で守ろうとするかのように覆いかぶさろうとしている感じだ。

 ベンチの男はいつまでもいつまでも犬を抱きかかえたまま、その場所から動くことはなかった。 

toto.jpg 

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第六百八十五話_short いとこの惑星 [news(時事ネタ)]

 惑星を代表する航空宇宙科学の権威であるNASAが、千四百光年離れた銀河に、わが惑星と非常によく似た惑星を発見したと発表した。太陽からの距離も、惑星の大きさも、公転周期も、そして惑星年齢も、すべてがよく似ているという。まだ調査ははじまったばかりでありはっきりとはわからないが、地質もよく似ているだろうと推察されており、おそらく水も存在しているだろうから、我々と同じような生命体が存在している可能性はかなり高いと考えられている。NASAはこの惑星を我々の惑星のいとこだと表現した。

「すごいね」

 バーのカウンターに寄りかかるようにして飲んでいた男が隣の男に言った。 

「よくもまぁ、そんな遠いところの情報を得たもんだ。いったいどうやって調べたんだろうね?」

 隣の男は興味なさそうに答えた。 

「そりゃあ、我々の技術は案外進んでいるのさ。その惑星にはもうずいぶんと前から調査艇が送り込まれているそうだよ」

 光速技術が発明されてからもうずいぶんと経つ。そのことを思えばそれくらいのことはあって当たり前だ。

「そうだよな。反対側にも同じような惑星が見つかるに違いないってうわさだけど、当然、そっちにも艇が飛んでるんだろうね」

「そりゃあそうさ。三百六十度すべての方向に、実にたくさんの調査艇が出されているよ」

「へえ!? そうなんだ? すごい」

「すごいじゃあないよ。その予算を一体誰が払っていると思ってるんだい?」

「「? 誰って?」

「なに言ってんだ。俺たち労働者の税金がそんなことに使われてんじゃあないか!」

「それはけしからん!」

 夢のような天体話が思わぬ方向に進んでしまい、ふたりの男は、腹を立てているときに誰だってそうなるのだが、額についた一対の触覚を激しく動かしながら、六本ある手足の真ん中を振り上げて怒りを露わにした。 

昆虫宇宙人.jpg

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第六百八十四話_short 品種改良 [news(時事ネタ)]

 バイオテクノロジーの進化は、ついに生物の遺伝子を”編集”可能にした。つまり問題のある遺伝子を削除して改変し、正常な状態に替えることができるわけだ。これがこれからの医療も変えていくであろう最新技術ゲノム編集だ。

 このゲノム編集によって、これまで何十年もかけておこなっていた農作物の品種改良もほんの数年で可能になるし、不治とされてきた遺伝子や細胞にまつわる病も治療することが可能になったのだ。

 しかし逆に生物の遺伝子を書き換えるということは神の領域を犯すとんでもないものに進展する恐ろしさもひそめている。

 さて、ここまでの前提を読んだ聡明な読者はもう想像力をたくましくしていることだろう。

 ゲノム編集によって新たな遺伝子を持った命をつくるためには、胚の状態で行うことが基本なのだが、成体にも影響を及ぼすことも可能だそうだ。たとえばHIV患者の血液を取り出して、その中の遺伝子から免疫不全を引き起こしている箇所を切り落とし、再度体内に戻すことによって、HIV患者の白血球は正常に戻る。筋ジストロフィー患者の細胞を取り出してゲノム編集を施してダメな部分を削除したうえで培養し、これを患者に戻すことによって筋肉が正常に戻せるのだそうだ。

 ということはなんだってできる。私の細胞を取り出してゲノム編集でダメな部分を削除し、よりよいものに改変してから体内に戻す。すると、私はより優れた人間として生まれ変わる。同じことをすべての細胞に施すことができれば……私はスーパーマンにだってなれるのだ。

 私はかねてから蓄えこんできた大金をかき集め、ひそかに超先端医療技術センターに出向いて依頼した。

「まずは、この不細工な容姿をゲノム編集によってイケメンに変更してほしい」

 技術的には可能なようだった。

 医師は私の細胞を取り出して、細胞遺伝子編集装置に投入した。この装置の中で、細胞に含まれた問題のある遺伝子が自動的に探し出されて削除される。残った箇所をつなぎ合わせると、正常な遺伝子として完成するのだ。

 明日、私はイケメンに生まれ変わるのだ! わっはっはっは!

  いよいよ装置が作業の完了を告げ、医師が扉を開けて結果を確認した。

「ああー……すべての遺伝子が削除されてしまいましたね。残念!」 


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第六百六十四話_short 新たなジャンル [news(時事ネタ)]

「お、いいじゃないか。それで行こう」

「でもこれ、ちょっとどこかのに似てませんか?」

「いいんだよ、そんなの。同じような人間が考えるんだから、少しくらい似るのが当たり前だ」

佐野毛似太郎は売れっ子のデザイナーだが、最近は弟子というか若いのに手を動かさせることが多くなった。その際に的確な指示を与えてやるというのがディレクターとしての役割だ。

「ほら、あのアニメのブタ、知ってるだろ? あれで行こう」

「あれでいこうって、どうすんです?」

「あんなブタをキャラにするんだよ、バーロー」

若い奴ら、いちいち面倒臭い文句を言ってくる。いいデザインが似てくるのは当然なんだよ。いいものはいいんだから。

「このバッグのデザイン、どうしましょう?」

「ネットで探して、いいのがあったら使っちゃえ、わかりゃあしないから」

「先生、ネットで見つけたこのイラスト、使えますかね?」

「そんなの素人の絵だろ? わかるわけねーから大丈夫だ」

「今度のスポーツ祭典のロゴですけど……」

「俺はあんなのがいいと思ってるんだがな、ほらベルギーかどっかの美術館の」

常に新しいデザインを、オリジナリティのある作品を、誰も見たことのないような驚きを。デザインはそういうものが求められた時代もあったが、今やデザインも飽和状態。もはや斬新なデザインなどあるのか? そう感じていた佐野毛は新たなジャンルを手にした。すでに世に出ている人の作品から良いところ取りをして、少しだけ新しくする。クライアントはそれで喜び満足してくれる。商業デザインなんて所詮そんなもんだ。

 え? それってパクリじゃないかって? いいんだよ、俺が開発した新しいジャンルの仕事作法なんだから。そうだよ、デザインにおける新ジャンルの騎手、俺はパクリエイターなんだよ。

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第六百三十九話_short 凶悪重罪犯の素顔 [news(時事ネタ)]

 カラオケボックスに入った時点で、すでにかなり酔っ払っていると自分でもわかっていた。でも、だからってなによ。今日は酔っ払いたいんだから! ちょっと、健史! 私、テキーラお願い!

 気がつくとほんの一瞬眠ってしまっていたらしい。健史が立ち上がって「俺、先に帰るよ」と言った。

「なによ。何でよ! 帰んないでよ。こんなに酔ってるの、あなたのせいよ!」

 呂律の回らない口で言ったが、あいつはさっさと出て行ってしまった。

「ちょ、ちょっとー! 待ってよ!」

 有希はふらふらしながら健史の後を追った。カラオケ店を飛び出したが、もう健史の姿は見えない。と思ったら、後ろから誰かが声をかけてきた。なあんだ、健史の奴隠れてたな! 振り向くと奴がいた。

「あの、カラオケ代、払ってください」

 な、なにぃ? 私に払えっていうの? あんたが払いなさいよ!

 有希は急に頭にきてそいつの股間を蹴り上げた。

「ちょ、ちょっと! なにすんですか!」

 奴がつかみかかってきそうになったので、目をつぶって右手を突出したら、顔面にヒットしてしまった。

「あっつ!」

 倒れた男は健史ではなく、見知らぬ若い店員だった。 

 

 パトカーの中で警官が有希に言った。

「あんた、大変なことそしちゃったね。これは強盗だよ。お金を払わずに暴力までふるって」

 でも、有希の記憶はあいまいだ。お金? 健史が払ったんだと思った。暴力? あ、あたし、そんな。健史に絡んだだけなのに……。

 

「強盗傷害容疑で連行された過去泉有希容疑者ですが……犯罪評論家の山口さん、これはどのくらいの罪になるんですか?」

「そうですね。これは結構な重罪ですよ。無銭飲食で暴力ですからねえ、強盗傷害ですと最低でも懲役四年、執行猶予もtsくんでしょうねえ」 

「容疑者は半年前にネイルサロンを立ち上げたばかりで、ブログをみる限りは、とても傷害事件を起こすような女性には見えないんですが……」

「そうですね。ふつうの人がまさかこんな事件を引き起こすなんて、世の中わからないですねえ……」

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第五百六十四話_short バッドエンド [news(時事ネタ)]

「さ、最悪だ!」

 そう叫びながらケンは海に飛び込んだ。敵の八代は既に自ら死を選んでいたのだが、それを見届けたケンはもはや生きていく目標を失ってしまったのだ。飛沫が散り、水中に泡が広がる中央にエンドタイトルが決まった。

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 最終回の放映後、ネットには批判の声が集まった。なんで二人とも死んでしまうんだ。なぜハッピーエンドにしなかったんだ。

 いまの視聴者はハッピーエンドのドラマを好む。だからどのドラマを見てもすべてがハッピーエンドで、最近一番の人気ドラマなど予定調和の極みのようなつまらない終わり方だった。それでも大衆が求めているのがそんな話なのだ。ところがものは考えようで、世の流れに逆らうことによってむしろ目立つのだと考えた番組プロデューサーが予定調和しないドラマを作ったということなのだ。

 しかし今回に限っては、そういうプロデューサーの目論見はまったく見当違いだったようだ。

 人々は現実とは違う物語にこそじぶんの望みを重ねる。あまりにもリアルに近い世界など見たくもないようだ。

 人間同士が憎しみ合い叩き合う身の回りの陰惨なバッドエンドを忘れて、虚構に満ちたハッピーエンドを求めている、それが現実世界であることをこのプロデューサーは忘れてしまっているのだった。

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